遺留分

遺留分減殺請求されたらすべきこと4つ|内容証明は無視してもよい?

遺留分減殺請求をされた・内容証明郵便による遺留分減殺請求の意思表示を受けたあなたはもしかしたら以下のようなことを思っているのではないでしょうか。

届いた内容証明郵便を無視したい…

せっかく自分が受け取った相続分だから、1円たりとも相手方には渡したくない…

今回の記事では、内容証明郵便により遺留分減殺請求の意思表示を受けた(遺留分減殺請求された)あなたが、これから取るべき対応法についてお伝えします。

そもそも「遺留分減殺請求」とは?

対応法についてお教えする前に、「遺留分減殺請求についてまだよく分かっていない」という方もいるかと思うので、はじめに簡単に説明します。すでに理解されている方は、次の項目にお進みください。

まず、遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している他の相続人に対して侵害額を請求することです。

少々難しいかと思いますので簡単に説明しますと、「遺言や贈与などにより、法律で最低限認められている相続分(遺留分)を得ることができなかった人が、その分多くもらっている人に対して『返してほしい』と請求すること」を言います。

この「返してほしい」という相手方の意思表示が、あなたの受け取った内容証明郵便にあたります。

つまりあなたは、相手方から「私が受け取った相続分が法律で最低限認められているだけの相続分を満たしていないので、あなたからもらいますよ」と言われている状態にあります。

「遺留分」自体よくわからないという方は、こちらの記事「遺産相続でトラブルが起きやすい「遺留分(いりゅうぶん)」とは?」もあわせてお読みいただくと理解しやすいかと思います。

 

内容証明郵便による意思表示の効果とは?

遺留分減殺請求をおこなうには「あなたに対して遺留分減殺請求をしますよ」という意思表示が必要です。

そして、この意思表示の方法には規定がありません。口頭によるもの、電話やメールによるもの、そして内容証明郵便によるもの、どの方法をとっても「遺留分減殺請求の意思表示をした」とされます。

しかし、実は、相手方が遺留分減殺請求の意思表示に「内容証明郵便」という方法を選択したことには理由があります。

それは、遺留分減殺請求の意思表示をした「日付」の証拠を残すためです。

遺留分減殺請求には、法律で以下の2つの時効が定められています。

 ・遺留分権利者が、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければならないという「消滅時効」

 ・相続開始から10年以内に行使しなければならないという「除斥期間」

そして、これら期間内に1回でも意思表示を行えば、遺留分減殺請求権を行使したとされ、時効が問題になることはなくなります。

つまり、相手方は「遺留分減殺請求の意思表示を時効の期間内におこなった」という証拠を残すために内容証明郵便による意思表示を選んでいのです

 

内容証明郵便による意思表示は「無視すべきでない」

自宅に内容証明郵便が届いたものの、「対応するのが面倒」「せっかく受け取った遺産だから相手と関わりたくない」という気持ちになった方もいるかと思います。

しかし、相手は遺留分を請求したいからわざわざ内容証明郵便で遺留分を請求しているのですから、内容証明郵便を無視しても問題は解決しません。あなたが無視をすれば、相手が、遺留分を請求するために訴訟や調停を起こしてくるということになります。

ただ、調停や訴訟を起こされたら対応するが、それまでは対応しないという方法もあります。

 

遺留分減殺請求されたあなたが相続分を守るためにすべき4つのこと

相手方が遺留分減殺請求権を行使した際には、遺留分相当の相続分は相手方に渡さなければなりません。

そして、お伝えした通り、内容証明郵便を無視することで相手方の遺留分減殺請求を拒否することはできません。

そこでこれからは、相続分を1円でも多く守るためにあなたにしてほしいことについて紹介していきます。

以下の4つが挙げられます。

① 遺留分減殺請求の時効が過ぎていないか確認する

先ほど紹介した通り、遺留分減殺請求には時効が存在します。「消滅時効」と「除斥期間」です。

これらを過ぎていれば、そもそも遺留分減殺請求ができません。

内容証明郵便で送ってきているというこから、時効が過ぎているという望みは薄いですが、念のため確認してみてください。

遺言書の内容などを知ってから1年というのは、結構期間が短いので、時効期間が経過している場合もあります。

そして、もし時効を過ぎているようであればあなたは遺留分を相手方に渡さずに済みます

② 不動産の評価額を下げる

もし遺産の中に不動産が含まれているようであれば、不動産の評価額を下げることで相手方に渡さなくてはならない相続分(=遺留分)は減ります。

遺留分は、遺産に対する最低限の割合です。つまり、遺産全体の額を減らすことで遺留分も減らすことができます

例えば、相続人が息子2人で、遺産は2000万円の預貯金と不動産、遺言には長男に遺産のすべてを相続されると書いてあったとします。

この場合、次男に認められた遺留分の割合は、遺産全体の4分の1です。

もし、遺産の中の不動産の評価額が6000万円だったとすると、次男は遺留分として2000万円分を取得します。

一方で、不動産の評価額を4000万円まで下げたとすると、次男が受け取れる遺留分相当額は1500万円分まで下がります。

このように、不動産の評価額を下げることにより、相手方への支払額を減らすことができます

ちなみに、不動産の評価方法のうち固定資産税評価や路線価を用いることで、不動産の評価額を下げることができます。

通常は時価によって評価をするのですが、これにより7-8割ほどに評価額を抑えることができます。

③ 相手方が受けた生前贈与が特別受益に該当するか確認する

相手方が、被相続人の生前に被相続人から、特別受益に該当する生前贈与を受けていた場合、あなたの支払額が減る可能性があります。

遺留分減殺請求権者に特別受益がある場合には、遺留分額から特別受益に相当する額が控除されるからです。

また、この贈与は生前におこなわれたものだけに限定されず、遺言書によって贈与された財産についても、同様に控除の対象となります

つまり、遺留分減殺請求の相手方の、特別受益に該当する贈与などの有無についてあなたは確認すべきです。

ただし、特別受益分が控除されるためには、贈与が特別受益に該当すると、裁判所に認められなければなりません。

そのためには、特別受益があったことの立証をおこなわなければなりませんが、これがとても厄介です。

特別受益について争う場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。

④ 価額弁償をおこなうことを提案する

価額弁償とは、相手方に対し不動産などの持ち分を渡す代わりに遺留分としてお金を支払うという方法です。

遺留分減殺請求権を行使すると遺留分に見合う持ち分が相手に移転することとなり不動産や株式などの財産が相手方とあなたとの共有になります。

しかし、それでは不動産や株式を処分したりするときに、いちいち相手方の承諾を得なければならなくなり、面倒なこととなります。

そこで、不動産や株式などの財産について、相手方の遺留分に相当する金銭を支払うことで、不動産や株式などの持ち分を渡さずに済むというものです。

遺留分を渡すのは仕方ないこととして、しかし共有にしたくない財産があるという方にとっては、有効な手段です。

また、換金しにくく、売却し換金する場合は不動産の仲介手数料や譲渡所得税がかかる不動産などを、相手方は価格弁償によりそのような諸費用を支払うことなく現金で受け取れるメリットもあることからその分減額できる場合もあります。

価額弁償については「価額弁償|遺留分減殺請求されたけれど不動産でなくお金で渡したい」で詳しく説明しています。

 
以上が、内容証明郵便による遺留分減殺請求の意思表示を受けたあなたにまずおこなってほしいことです。

 

遺留分減殺請求されたのであれば、弁護士に一度相談してみるべき

遺留分減殺請求の意思表示を受けたからといって、請求額どおりに遺留分を渡さなければならない訳ではありません。

紹介したように、あなたにできることはいくつかあります。

一度受け取った遺産を手放したくないという気持ちは十分理解できますが、内容証明郵便による遺留分減殺請求の意思表示は無視しないことが賢明です。

そして、意思表示を受け取ったのちに堂々と「自分が受け取った相続分は正当である」ということを主張しましょう。

さらにあと一つ、あなたに伝えたいことがあります。

それは、相手方が内容証明郵便にて意思表示をおこなってきた場合内容証明郵便に弁護士の氏名が書かれていればもちろん弁護士に依頼していますが、 弁護士の氏名が書かれていない場合でも相手方は弁護士に相談している可能性があるということです。

また、最初に申し上げたとおり、わざわざ内容証明郵便で遺留分を請求しているくらいですから、その時点で弁護士に依頼していなくても、それが無視されれば、その後に弁護士に依頼して、調停や訴訟で遺留分を請求してくる可能性は高いです。

もし相手方が相続のプロを味方につけていたとして、それに対してあなた一人で争うこととした場合、争いの結果はどうなるでしょうか。

遺留分などの相続問題も法律問題であり、交渉の段階から、訴訟で判決となった場合を見据えて対応しなければ不利になる可能性が高いですし、法律や証拠に基づいて争わなければあなたの主張で通るものも通らなくなってしまう可能性があります。

そう考えると、ご自分の判断で争っていくのは難しいと思いますし、かえって自分に不利なことを相手方に言ってしまう可能性もあります。

どうしても相手方に渡す相続分を少しでも減らしたいと思うのであれば、あなたも相続について知識や経験が豊富な弁護士を味方につけることが賢明です。

きっとあなたにとって力となってくれるはずです。

 

あなたにおすすめの記事

 

「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。


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