今回の記事では、被相続人が亡くなってから時間が経過したのちに、被相続人が連帯保証人だったことを知った場合について、事例を用いながら紹介します。
連帯保証の立場は相続放棄することができるのかについて紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
今回扱う事例
父親A、母親B、AとBの息子である長男C、娘の長女Dという4人家族がいました。父親Aは3年前に他界しています。
父親の遺言には、長男Cと長女Dに少しばかりの預金を残し、残りは全て母親Bに相続させるという旨が記載されていました。そして、相続人であるB・C・Dの3人はその遺言に従い財産を相続しました。
しかし、それから3年が経ったここ最近母親Aの元に銀行から書類が届来ます。内容は、2,000万円の借金があるから返済してほしいというもの。母親Aからすると、その銀行には口座を持っておらず全く身に覚えはありませんでした。
そこで、銀行に行って確認してみると、実は父親が知人の連帯保証人になっていたということが分かります。その知人は借金の返済をしていたものの、数週間前に他界してしまったとのこと。しかも、その知人の相続人が相続放棄をしたとのことで、連帯保証人であった父親Aのものに返済の請求が来たという次第でした。
連帯保証人とは?
まずは父親Aが知人の連帯保証人になったということで、連帯保証人とは何か?について解説していきましょう。
その前に「保証人」についての説明をしていきますね。
保証人とは、主たる債務者がお金を返済しない場合に、借りた人に代わってそのお金を返済することを約束した人のことをいいます。
そして、連帯保証人は保証人なので、同様の人のことを言いますが、保証人以上に重い責任が課されています。
具体的に、保証人と連帯保証人の違いは「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」と行った権利が認められているかという点です。保証人には、これらが認められているものの、連帯保証人にはこれらが認められていません。
催告の抗弁権:「まずは借金をした張本人に請求してくれ」と主張する権利。
検索の抗弁権:「借金をした張本人の財産からしっかり返済をさせた後でなければ、支払わない」と主張する権利。
分別の抗弁権:保証人が複数人いる場合に、人数に応じた平等の割合の金額分しか責任を負わなくてよいということ。
これらが認められていない連帯保証人には、お金を貸した債権者はいつでも、いくらでも、借金額を上限として、返済を求めることができるのです。
連帯保証人が亡くなった際の債務は?
連帯保証人の連帯保証債務も相続の対象となります。したがって、連帯保証人が亡くなった際に相続人がその連帯保証債務を負担することになります。
しかし、相続人が相続放棄をすれば話は別です。相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も含めて、一切の相続をしないことなので、連帯保証の債務も相続しなくて済みます。
当事者が相続放棄をしても連帯保証の地位は消えないのか?
今回の事例のような場合「知人の相続人が相続放棄をした段階で保証人の借金が消えるのでは?」と思う方もいるかと思います。
しかし、残念ながら法律上、連帯保証債務が消えることはありません。
連帯保証債務を引き継がないようにするには、相続放棄をするしかないのです。
相続放棄の期限は、相続開始を知ってから3ヶ月後
実は、相続放棄には時効があります。放棄するには、相続が開始した(被相続人が死亡した)ことを知ってから3ヶ月以内に行わなければなりません。この相続放棄が行える3ヶ月を「熟慮期間」と言います。
これ以上の期限を過ぎると、原則相続放棄はできなくなり、単純承認したとみなされ、プラスの財産・マイナスの財産全ての遺産を相続することになります。
したがって、今回の事例の場合、父親Aが死亡して(相続開始を知って)から3年が経過しているため、相続放棄することができません。つまり、母親B・長男C・長女Dは、父親の連帯保証債務を相続するしかないのです。
また、遺言に従って、遺産を相続している点からも単純承認をしており、相続放棄はできません。
ちなみに、連帯保証債務を相続すると、法律上の相続割合に応じて保証人になります。母親Bだけではなく、長男Cと長女Dも地位を相続するのはそのためです。
※ただし、被相続人にはプラスの財産もマイナスの負債もないと考えていたので相続手続も、相続放棄の手続もとっていなかったというケースでは、熟慮期間が過ぎてしまっても相続放棄が認められる可能性がありますので、弁護士に相談してみてください。
相続放棄をした当事者に求償権を行使することもできない
求償権とは、保証人が借金の張本人の代わりに支払いをした場合、そのぶんを張本人に請求することができるという権利です。
今回の事例で言えば、連帯保証に関わる返済を母親B・長男C・長女Dがした際に、その返済した費用を知人の相続人に求めることができるのか?という疑問についてです。
結論から申しますと、彼らは求償権を行使することができません。知人の相続人は相続放棄をしているので、返済費用を求めることはできません。
つまり、この借金の返済義務は母親B・長男C・長女Dの3人のみで負うしかありません。
諦めずに弁護士に相談してみることをおすすめします
このように、連帯保証人になることは家族に対して大きな負担を課すことにつながります。
ただし、もし気づかない間に連帯保証債務を相続してしまっていたという場合には、先程申したように、遺産も負債も全くないと考えていたので相続手続も、相続放棄もしなかったような場合には、たとえ相続放棄の期限が過ぎてしまっていたとしても、認められる可能性があります。
このようなケースでは、既に熟慮期間を経過しているにもかかわらず、相続放棄が認められる理由を申述書に記載しなければなりませんから、ご自分で申述書を作成することは難しいと思います。
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