遺産相続は遺言書に沿った形で進むことが一般的です。しかし、遺言書には「有効な遺言書」と「無効な遺言書」があります。
あなたの目の前にある遺言書は「有効」でしょうか、「無効」でしょうか。
この記事は、目の前にある遺言書通りに遺産分割が進むと思っていたにも関わらず、親族から「この遺言書は無効である」と言われてしまった方に読んでほしいです。
以下のチェックリストを活用し、有効な遺言書か無効な遺言書かを判断してみてくださいね。
そして記事の最後では、残念ながら、遺言書が無効となってしまった場合に、あなたが取るべき手段を紹介しております。
目次
無効になる遺言チェックリスト
他の相続人に「遺言が無効なのでは?」と言われたあなたは、本当にこの遺言は無効なのかと疑問に思っていることでしょう。
果たして、あなたの相続分が記載されている遺言は無効なのでしょうか。
以下にチェックリストを用意したので、遺言書と見比べてまずは確認してみてください。
・遺言書が自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言とは、全文を自分で書いた遺言書です。自分一人で書くものであるため、遺言書に求められる書式を備えておらず無効になるケースが比較的多いです。
- 紙面でなく録音されている
- 日付の記載がない
- 日付の特定ができない (例. ◯◯年◯月吉日など)
- 遺言作成の日でない日付が記載されている
- 日付印を用いている
- 署名がない
- 押印がない
- 全部または一部をパソコンやワープロで作成されいている
- 全部または一部を他人が書いている
- 相続する財産の内容が不明確
これらのうち、一つでも当てはまるものがあれば、その遺言書は無効となります。
・遺言書が公正証書遺言の場合
遺言者(遺言を書いた人)が遺言の内容を公証人に伝え、その公証人に作成してもらう遺言書が公正証書遺言です。
- 立ち会った証人が不適格な人物(未成年者、推定相続人、公証人の配偶者、公証役場の職員)である
- 証人がいない、もしくは1人しかいなかった
どちらかに当てはまればその遺言書は無効です。
しかし、公正証書遺言の場合、法律の専門家の元で作成するため、書式が条件を満たしていないということはほとんどありえません。つまり、無効になるケースは極めて稀です。
・すべての遺言書において
- 遺言者(遺言を書いた人)が15歳未満
- 遺言者(遺言を書いた人)に認知症や精神疾患などの症状があり、判断能力がない
遺言書を書くにあたり「遺言能力」を備えていることが必要です。上記に該当する場合、遺言能力の無い者が作成した遺言書とされ、その遺言は無効となります。
認知症や精神疾患の有無については、例えば当時、医師が認知症と診断していたかどうか、またその重症度がどうだったか等が、診断書やカルテ、看護記録をもとに判断されることになります。
ただし、認知症や精神疾患があったからと言って、遺言書は直ちに無効とされるわけではありません。あくまでも、認知症や精神疾患によって、判断能力がなかったと認められる場合のみ遺言が無効となります。
以上のチェックリストで確認していただき、いずれかに該当した場合、その遺言は無効になる可能性が大いにあります。
遺言書が無効だった場合の遺産の分割方法は?
遺言書が無効だった場合、原則相続人の法定相続分に応じて遺産を分割することになります。
法定相続分とは、亡くなった方から見て以下の立場の人らに認められている遺産の取り分のことです。
- 配偶者
- 子
- 直系尊属(父母や祖父母)
- 兄弟姉妹
これらの人を「法定相続人」と呼びます。相続人の組み合わせとあなたの立場により、あなたの法定相続分決まるので、以下の表に照らし合わせてみてください。
法定相続人 | ||||
組み合わせ |
配偶者 |
子 |
直系尊属 |
兄弟姉妹 |
配偶者のみ |
1 |
|||
配偶者+子 |
1/2 |
1/2 |
||
配偶者+直系尊属 |
2/3 |
1/3 |
||
配偶者+兄弟姉妹 |
3/4 |
1/4 |
||
子のみ |
1 |
|||
直系尊属のみ |
1 |
|||
兄弟姉妹のみ |
1 |
同じ立場の方が複数人いる場合は、割合をその人数で等分してください。
例えば、法定相続人の組み合わせが配偶者と子3人だった場合、配偶者の法定相続分は表の通り1/2ですが、子1人あたりの法定相続分は1/2を3人で割った1/6ということになります。
また、直系尊属は親等が近い順に優先されるので、父母と祖父母がいる場合、父母のみが法定相続人となります。
実際に表で確認してみていかがでしょうか。あなたに認められている法定相続分は、遺言の内容を下回るのではないでしょうか。遺言通りに分割した際に受け取ることのできた遺産よりも少なくなってしまうことでしょう。(※ただし相続人全員が参加して有効な遺産分割協議が行われれば、法定相続分を無視して自由な割合で相続することも可能です。)
しかし、まだあなたには法定相続分以上の遺産を相続できる可能性が残されているかもしれません。
ここからは、もしかしたら法定相続分以上の遺産を受け取ることのできるかもしれない、その可能性について紹介します。
まだあなたには法定相続分以上の遺産を相続できる可能性があります。
あなたが、亡くなった方の財産の増加や維持に貢献していた。
- 亡くなった方の事業に従事し財産の維持や増加に貢献した
- 亡くなった方が病気になってしまった際に療養看護をし財産の維持や増加に貢献した
上記の例のような、財産の増加や維持に特別の寄与をしていたというケースがあるかと思います。そのような場合には、法定相続分に加え、貢献した努力の程度に相当した相続分が増加する可能性があります。これを「寄与分」と呼びます。
ここで重要なことは、「財産の維持や増加に貢献した」という点です。単に、事業に協力した、療養看護したというだけでは、この寄与分は認められません。あくまでも「財産の維持や増加に貢献した」場合にのみ扱われる制度です。
寄与分が認められる場合には、相続分は一般的に以下のように計算されます。
まず、遺産の総額から寄与分相当額を控除し、控除した遺産を法定相続分で分割します。そして、寄与分が認められる相続人の法定相続人に、あらかじめ控除した寄与分を加算するということになります。
例えば、亡くなった方の遺産が6000万円だったとします。この方には、あなたを含めて3人の子供がおり、そしてこの3人以外に相続人はいません。
一般的に考えると、それぞれの子供には2000万円ずつ法定相続分が認められることになります。
しかし、あなたがこの亡くなった方の事業を手伝っており、1500万円の寄与分が認められたとしたらいかがでしょうか。
6000万円から1500万円を控除した4500万円をまず3人で分割するので、それぞれ1500万円が分配されます。
さらにあなたには、寄与分として認められた1500万円もあるので合計して3000万円の相続分ということになります。
このように、あなたに「亡くなった方の財産の増加や維持に貢献した」という覚えがあるようでしたら、寄与分の主張をしてみると相続分が増えるかもしれません。
他の相続人に特別受益を得ている人がいた
- 亡くなった方が生前、他の相続人に対して不動産購入資金の援助として〇〇万円贈与した
- 亡くなった方が生前、他の相続人に対して海外留学費用として〇〇万円贈与した
- 亡くなった方が生前、他の相続人に対して無償で住居を貸していた
亡くなった方から生前贈与を受けたという人がいる場合、この相続人が他の相続人と同じだけの相続分を受けられるとなると不公平になってしまいます。
そこで民法では、それらで得た特別受益分を遺産に持ち戻して計算し、その後各相続人の相続分を算定するように定めています。
特別受益が認められる場合には、相続分は一般的に以下のように計算されます。
まず、相続開始時の遺産に特別受益に該当する生前贈与の額を足します。これを「みなし相続財産」と呼びます。そして、このみなし相続財産を各法定相続人に対して法定相続分で分割します。そこから、特別受益を受けた人に関しては、特別受益分を引き、相続分を算出します。
例えば、配偶者とあなたを含む子供を相続人とし、5000万円の遺産があった場合について考えます。さらに、あなたの兄弟に対し、この被相続人は学資として1000万円の生前贈与をしていたとしましょう。
その場合、まず5000万円と1000万円を足して6000万円がみなし相続財産となります。これを相続人で分割するので、配偶者に3000万円、子供1人に対して1500万円の法定相続分ということになります。そして、あなたの兄弟は1000万円生前贈与されているので、その額を引いて500万円が具体的な取得額となります。
もし、他の相続人がこのような特別受益を受けているような場合であれば、あなたが受け取ることのできる遺産は増えることになります。特別受益分を持ち戻して相続分を計算するためです。
遺産分割を弁護士に相談・依頼してみる
寄与分や特別受益が関係する遺産分割では相続人同士でのトラブルが少なくありません。
加えて、寄与分や特別受益の主張をするには、根拠となる証拠をしっかりと揃えなければなりません。
一般的な遺産分割よりもスムーズに進めることがはるかに難しくなってきます。
そこで提案したいのが、「弁護士に相談・依頼する」ということです。
弁護士は相続のプロであり法律問題解決のプロであります。解決が難しい問題を幾度も解決に導いてきています。あなたの要望を汲み取りながら、できるだけその要望に沿った解決を目指してくれるでしょう。
あなたがより良い解決を望むのであれば、相続領域での経験豊富な弁護士を頼るということを検討してみてはいかがでしょうか。
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もしあなたが相続のことでお悩みでしたら、ぜひともお問い合わせください。相続に関することであればどんな些細なことでも構いません。悩むあなたのパートナーとして親身に寄り添い解決を目指します。
なお、初回相談料30分5,000円(税別)いただいています。
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代表弁護士:高島秀行
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