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遺産相続が揉めてしまう原因
遺産相続が揉めてしまう一番の原因は、相続人が遺産(相続財産)について話し合って決めることとなっていて、話し合いがつかなかったら裁判所が決めることになっているからです。
相続が発生したら相続人は、遺産(相続財産)について話し合いをしてまとまらなければ、遺産(相続財産)を亡くなった方の入院費用や葬儀費用に使うこともできないし、残された妻などが生活費に使うこともできないのです。
そこで、欲の深い相続人は、自分に有利な遺産分割でないと話し合いには応じない、あるいは遺産相続手続の書類に署名捺印はしないとゴネ易くなります。
また、話し合いがつかなければ裁判所で調停を行い、それでも解決しなければ裁判所に決めてもらうことになるので、遺産相続は、裁判所で戦うことになりやすいとも言えます。
遺産相続を揉めないようにする方法があります。それは、被相続人が生前に遺言書を書いて、遺産の配分を決めてしまうことです。
そうすれば、基本的には、遺言書のとおりに遺産を分けることとなり、相続人同士の遺産分割協議は不要となります。
欲の深い相続人がいても、欲の深い相続人の署名捺印や承諾なしに、遺言書によって遺産相続の手続を進めることができるので、揉める余地がなくなります。
また、その他にも遺産相続が揉めてしまう理由はありますが、それらは「遺産相続トラブルはなぜ起きやすい?トラブルが起きる”5つ”の理由と対策」の中で紹介しています。
揉めてしまう遺産相続の具体例
父Aは、土地建物(3000万円)、預金1000万円を持っています。父Aには、子供が長男と長女の2人います。父Aは長男夫婦と長男夫婦の子供と同居しており、父Aの面倒は長男夫婦が見ています。
父Aは、うちのように、小さな家と預金しかないようなケースで、遺産相続で揉めるはずがないと楽観的に思っており、遺言書を書くなんて全く考えていません。
しかし、このケースで、父Aが遺言書を書かずに亡くなったとすると、遺産は4000万円なので、長女と長男は2000万円ずつ相続できることとなります。
そこで、長女が、土地建物を長男が相続するのは良いとしても、長男に2000万円を支払うよう請求してくることが予想されます。
長男が父Aの残した1000万円以外に1000万円貯金があれば、問題は解決しますが、長男に自分の預金がなければ、土地建物を売って、その代金をわけなければならなくなってしまいます。自分の面倒を見てくれた長男夫婦とその子に、家を売らせて出て行かせてしまうということになってしまうのです。
長女が欲が深ければ、土地建物の評価は、3000万円どころではなく4000万円でも売れると言ってくるかもしれません。そうなると、家が売ったら3000万円なのか、それとも4000万円なのかでも争いになってしまいます。
これに対し、長男夫婦は、父Aの介護をしてきたと寄与分を主張して、さらに揉め事は大きくなっていきます。
遺産相続で争った兄弟や親子は、相手の欲深さや不信感からそれまでのように仲良くはやっていけなくなってしまうのが普通です。
うちなんか揉めるはずがないと思っている父Aの楽観から遺産相続は揉めてしまうのです。
遺言書を書くことによるによる解決方法
上記のケースで、父Aが遺言書を書いて、
① 土地建物は長男に相続させる。
② 預貯金は長女に相続させる。
とします。
そうすれば、長女の遺留分は、4分の1で、上記のケースで遺産は4000万円で、長女の遺留分は1000万円ですから、遺留分を請求することはできないこととなり揉めずに済むということになります。
親に遺言書を書いてもらうにはどうしたらよいか
これは、なかなか難しい問題です。というのも、被相続人となる両親は、自分が死ぬことなど考えたくありません。
相続人となる子供の方でも、遺言書を書いて欲しいなどと言えば、両親に両親が早く死ねばよいと思っているのか、両親の財産を狙っているのかと疑われるおそれがあって、なかなか言いにくいからです。
しかし、そのまま放置してしまえば、両親の死後に遺産相続の問題で争いが生じてしまうだけです。
勇気を持って、両親に、両親が亡くなったらどうするつもりなのか聞いてみましょう。
父親が先に亡くなった場合、母親が先に亡くなった場合、実家はどうするつもりなのか、母親の介護費用はどうするのか、母親の面倒は誰が見るのかなどなど、これらは万一のことが起これば現実に直面する問題なので、はっきりして欲しいと真剣に言われたらよいと思います。
特に、事業を手伝い承継する予定の場合や一緒に住んで介護等を引き受ける場合には、何となくではなく、具体的に何をどう相続することとなるのか決めて遺言書を書いてもらう必要があります。
両親が、これに応えてくれなかった場合はどうしたらよいでしょうか。
このときには、それでは、事業を手伝って承継するのは難しいので止めさせてほしい、あるいは一緒に住んで介護したりするのは難しいとあなたが思う気持ちを率直に言ったらよいと思います。
事業承継の必要も、介護の必要もなく、両親がまだまだ元気で相続に対する危機感が乏しい場合は、「終活」の記事や相続に関する弁護士のコラムなどを見せて、両親の意識を変えていくことも必要かもしれません。
親が遺言書を書いても揉めてしまうことがある
せっかく遺言書を書いてもらっても、その遺言が元で揉めてしまう場合があります。
それは、遺言が法律の要件を満たしておらず無効な場合と遺留分を侵害してしまう場合、また、遺言書を法的知識のない本人が書いたことから、遺言の意味がはっきりしない場合があります。
遺言が法律の要件を満たしておらず無効な場合
自筆証書遺言は、法律上、遺言者が①全文自筆で、②日付を書いて、③署名捺印をすることが必要とされています。
ワープロで打ったり、日付がなかったり、印鑑がなかったりすると、無効になってしまいます。
また、自筆証書遺言でも、公正証書遺言でも、遺言者に判断能力(遺言能力)がない状態で作成された遺言書は無効になります。
「『その遺言書は無効だよ!』と親族から言われてしまった皆様へ、まだ諦めないでください」の記事に、「無効となる遺言書チェックリスト」を掲載しています。照らし合わせながら書いてみることをおすすめします。
遺言書の内容が遺留分を侵害している場合
特定の相続人に全財産を相続させるという遺言は、他の相続人の遺留分を侵害することとなってしまいます。
遺留分を侵害する遺言書では、遺留分を巡って訴訟が起こされることになってしまいます。
書こうとしている内容が遺留分を侵害しているかどうか、この記事「遺留分の割合と計算方法|あなたは遺留分を侵害されているでしょうか?」を読めば判断できます。
遺言の意味がはっきりしない場合
最後に、本人が遺言書を書く場合、遺言の意味がどういうことなのかはっきりしないことから揉めてしまうということがあります。
例えば、Aという土地(時価5000万円)は、長女に相続させ、Bというマンション(時価3000万円)は長男に相続させるという遺言を書いたとします。残りの預金や株などの金融資産(2000万円)について遺言書に何も書いていないと、長男と長女で半分ずつ分けるのか、それとも、長女は土地だけで5000万円相続するので、マンションが3000万円の長男が預金などの金融資産2000万円と合わせると5000万円なので、これらは長男が相続するのか争いになってしまいます。
親に揉めない遺言書を書いてもらうために
遺言書は、法的な文書ですから、その作成には弁護士に相談しましょう。ちょっと複雑な場合は、弁護士に依頼して作成してもらった方がよいと思います。
そうすれば、せっかく書いてもらった遺言が法的な要件を満たさないとして無効になったりしなくなります。
また、ご両親が元気なうちに書いてもらいましょう。
脳梗塞などで倒れてしまってから慌てて書いてもらおうとしても、そのときにはもう有効な遺言書は書けなくなってしまう可能性があります。こうなってしまうと弁護士は何もして差し上げられません。
ご両親が元気なうちに、万が一のことがあったらどうするのか、どうなってしまうのか、家族みなさんで考えてみて、率直に意見を交わして話し合うことが揉めない遺言書を書いてもらう最大の方法だと思います。
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