遺言

遺言書に記載された財産がすでに処分されていたとき相続できるのか?

遺言書に「相続人○○に土地を譲る」と書いてあるのに、相続開始時点ではすでに被相続人のものではなくなっていたということがあります。

今回はそのようなケースに遭遇した方に向けての記事です。

遺言で指定された遺産が実はすでに処分されていた、このような場合に土地の相続はできるのか?、また相続できないとしてせめて売却代金を受け取ることはできるのか?、これらについて事例を用いて紹介します。

今回扱う事例

父親A、母親B、AとBの息子である長男C、娘の長女Dという4人家族がいました。父親Aは相続財産を指定する遺言書を作成して死亡しました。

長男Cは、遺言書の中で土地を自分に相続する旨が記されていたので、役所に確認。すると、すでにその土地が父親Aのものではないということが判明しました。どうやら遺言書を作成した後にその土地を売却したようです。

このような場合、遺言書で指定されている土地の相続はできるのでしょうか。あるいは、土地の売却金額分だけを相続することはできるのでしょうか。

 

遺言書に記載された遺産が処分されていたら

土地に相続について、結論から申しますと、長男Cは遺言書で指定されている土地を相続することはできません

本ケースのように、特定の土地を誰かに与えると指定した遺言があるのに、調べてみたら相続開始時点ではそのような遺産はない、という場合が少なくありません。

このような場合の多くは、遺言者が遺言を書いたのちに処分をしたということがほとんどです。

このような場合、生前処分によって遺言の取り消しがあったことになります。したがって、本ケースにおいて、長男Cは父親の死後土地についての権利を有していないことになります。

民法1023条
第一項
前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。

第二項
前項の規定は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する。

遺言は遺言者の最終意志を尊重するもの

遺言は、遺言者の最後の意思を尊重するものです。したがって遺言者はいつでも自由に撤回し、あるいは新たに遺言をすることが保証される必要があります。

たとえ遺言者が財産の処分内容を記載した遺言を作成したとしても、のちになって、それを翻し遺言の内容と異なった財産処分をおこなったり、全く新しい遺言を作成したりすることは大いにあり得ます。

これらの行為によって前の遺言の一部または全部を撤回することを禁止するものではないのです。

遺言書の撤回の範囲は、遺言と抵触する生前処分の範囲

なお、遺言と抵触する生前処分の範囲で撤回の効力が生じるものです。したがって、土地以外の遺産については、特段これを撤回するものがなければ、遺言書の記載通りの効力が発生します。

土地を売却して得られた金銭は、これが遺産として残っており、遺言書に現金や預貯金の貴族についての記載がなければ、法定相続分に従って、相続人同士で分割し相続することになります。

 

遺言書の撤回の方法

遺言書の撤回についてもう少し見ていきましょう。

遺言の効力が発生するのは遺言者が死亡した時点です。つまり、遺言によって利益を受けることが推定される者も、遺言者が死亡するまでは何の利益を受けることがありません。

そして、先ほど述べた通り遺言者には、自由に遺言の撤回をすることが認められています

その方法は、今まで紹介したものも含めて全部で5つが規定されています。

・遺言を撤回する旨の遺言による撤回(民法第1022条)
・前の遺言と抵触する遺言による撤回(民法第1023条1項)
・遺言と抵触する生前処分その他の法律行為による撤回(民法第1023条2項)
・遺言書の破棄による撤回(民法第1024条)
・遺言の目的物の破棄による撤回(民法第1024条)

これらどれも遺言の形式は問われません。自筆証書遺言でも公正証書遺言でも撤回することができるのです。

冒頭の事例は「遺言と抵触する生前処分その他の法律行為による撤回」に該当します。

 

遺贈者よりも先に受遺者が死亡した場合

今まで紹介したのは、相続開始前に目的物が処分されていた場合です。

ここからは、相続開始前に受遺者が亡くなっていたケースについてです。

遺贈の場合、受遺者が遺言者よりも先に死亡すると、その効力は無効になります。遺贈という行為が、「受遺者」と「遺贈者」との間の関係からなされる法律行為だからです。

そして、遺贈される予定だった相続財産については、他の相続人が相続分に応じて受け取ることになります

 

遺言者よりも先に相続人が死亡した場合

遺贈と似た遺言でいわゆる「相続させる」遺言があります。この場合、相続開始前に相続人が亡くなっていたというケースも考えられます。

相続人の場合は代襲相続が定められていることから、相続人が亡くなっていてもその子や孫が相続人として遺言に従った相続できないかということが問題となります。

この点については、代襲相続人が遺言に従って相続できる判例と相続できないという判例が分かれていましたが、最高裁判例で、遺言に代襲相続人に相続させるという記載がなければ遺言に従った相続はできないとされました。

したがって、遺贈の場合と同様に亡くなった相続人に相続させることが予定されていた相続財産は、遺産分割協議の対象となります

 

遺言書に記載された財産がない場合には弁護士に相談を

遺言書に記載されていた遺産が何らかの理由により、処分されていたという場合には弁護士に相談することをおすすめします。

遺言の撤回の範囲については、ケースによってことなるからです。

また、本来相続されるはずの財産を遺族や他の相続人に対し贈与したということもあるでしょう。そのような場合には、遺留分の請求を求めることができます。

他の相続人や遺族が処分したというような場合は損害賠償請求をすることになり、トラブルに発展することもあるでしょう。

トラブルを迅速に解決するためにも、早い段階で弁護士に相談することを勧めます。


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代表弁護士:高島秀行

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