相続が発生し遺言書を見てみたが、自分が相続できる遺産があまりにも少ない、そのような悩みを抱えていませんでしょうか。
法律では、相続人に対して「遺留分」という最低限度の遺産の相続を保証しています。もし遺言書の内容が遺留分を下回っていた場合、あなたはより多くの遺産を得られるかもしれません。
今より多くの遺産を得るためにも、あらかじめあなたに認めらている遺留分の金額を知りましょう。
今回の記事を読めば「あなたに認められている遺留分の金額」が分かるようになります。
目次
そもそもあなたに遺留分は認められている?
まず、遺留分について知りたい方はこちらの記事「遺産相続でトラブルが起きやすい「遺留分(いりゅうぶん)」とは?」をお読みください。
そして、遺留分が誰に認められているのか知りましょう。果たしてあなたに遺留分は認められているでしょうか。
「遺産相続でトラブルが起きやすい「遺留分(いりゅうぶん)」とは?」の中でも紹介していますが、遺留分が認められている相続人には、以下の3種類があります。
① 配偶者
② 子供
③ 直系尊属(父母や祖父母)
被相続人の兄弟には遺留分が認められていないので注意が必要です。
また、上記3種類のいずれかを満たしていても、相続権を有しない人は遺留分を請求する権利がありません。相続権を有しない人とは、以下に該当するのこと人です。
① 相続欠格者
② 相続人廃除の扱いを受けたもの
③ 相続放棄をした者
相続欠格や相続人の廃除について知りたい方は「相続欠格と相続人の廃除、法定相続人なのに相続権が無いとは?」をご覧ください。
ここまで確認して、あなたに遺留分は認められているでしょうか。もし認められているのでしたら、続きを読んで遺留分の金額を知りましょう。
遺留分の割合を知りましょう
ここまであなたに遺留分の請求が認められているのかについて確認を行いましたが、これからは各相続人に認められている遺留分の割合についてお伝えします。どの程度の金額の遺留分を請求できるのか、計算するに当たって確認しておきましょう。
遺留分のルールは、直系尊属(父母や祖父母)のみが相続人のときは3分の1、その他の方が相続人のときは法定相続分の2分の1となります。
以下、主な7つのパターンに分けてご紹介します。
① 相続人が配偶者だけの場合の遺留分の割合
配偶者に認められる遺留分は、遺産全体の1/2です。
② 相続人が配偶者と子供の場合の遺留分の割合
配偶者の遺留分は、遺産の1/4です。同じく子供の遺留分も遺産全体の1/4となっており、子供1人あたりの割合はその1/4を子供の人数で均等に分けます。
③ 相続人が配偶者と直系尊属(父母や祖父母)の場合の遺留分の割合
配偶者の遺留分は2/6、直系尊属の遺留分は1/6となります。直系尊属が複数いる場合には、1/6を人数で均等に分配します。
④ 相続人が配偶者と兄弟の場合の遺留分の割合
配偶者の遺留分は1/2です。兄弟は遺留分権利者でないため遺留分を請求することはできません。
⑤ 相続人が子供のみの場合の遺留分の割合
子供の遺留分は1/2です。子供の人数でこの1/2の遺留分を分配します。
⑥ 相続人が直系尊属(父母や祖父母)のみの場合の遺留分の割合
直系尊属の遺留分は1/3です。
⑦ 相続人が兄弟のみの場合の遺留分の割合
先程お伝えした通り、遺留分権利者に兄弟は含まれないので、遺留分の請求はできません。
相続人に誰がいるのか、被相続人から見て自分はどの立ち位置なのかによって、請求が認められている遺留分は変わってくるので、しっかりと確認しておきましょう。
遺留分の対象となる遺産とは
さらに、遺留分の計算にあたって、遺留分の算定対象となる財産についても知らなければなりません。何が遺留分の対象になる財産なのか、何が対象にならない財産なのか知ることにより、実際にあなたに認められている遺留分の具体的な金額の計算が可能になるでしょう。
遺留分の算定対象となる財産の計算方法とは?
遺留分算定の「基礎財産」と呼ばれます。この遺留分算定の基礎財産には計算式があります。
遺留分算定の基礎財産 = 相続開始時に被相続人が有していた「積極財産」 + 贈与財産の価額 − 相続開始時に被相続人が負っていた「相続債務」
この計算により算出された基礎財産とそれぞれに認められている遺留分を元に遺留分の金額が決定されます。
遺留分算定の「積極財産」には何が含まれる?
積極財産とは、相続人にとって価値がある、プラスの財産のことを言います。
例えば、預貯金や株式、有価証券や不動産、土地などが積極財産にあたります。これらは遺留分の算定対象になります。
贈与財産の全てが遺留分算定の基礎財産に含まれる?
生前贈与は、被相続人が生きている頃に例えば子供や孫に対して分け与えたもののことを言いますが、遺留分の対象となるかは、贈与の相手方によって異なります。
まず、相続人に対する贈与は、全て特別受益として、遺留分の対象となります。
これに対し、相続人以外への贈与は、全てが遺留分算定の基礎財産に含まれるわけではありません。条件に当てはまるもののみ算定財産に含まれます。
1つが、「相続開始から1年以内にされた贈与」です。亡くなった日から逆算して1年以内に贈与したものであれば、贈与相手が相続人以外の第三者でもその財産は遺留分算定の基礎財産になります。
また、亡くなる1年以上の贈与の場合であって、贈与の相手方が相続人以外の第三者であっても、財産を渡す側・受け取る側が、その本人の遺留分を侵害することが分かっていて財産を贈与していた場合は、基礎財産に含まれます。
以上に当てはまる贈与であれば、その贈与は基礎財産に含まれ遺留分の計算が行われます。逆に言えば、これら条件に当てはまらない生前贈与分は遺留分算定の基礎財産に含まれません。
より詳しく生前贈与が遺留分の算定対象になるのか確認したい方は「生前贈与は相続トラブルのタネ!数年前の生前贈与は遺留分の対象となるのか?」をお読みください。
遺留分の計算例
ここまで主なパターンに分けての各相続人が請求できる遺留分、また算定対象の財産についての紹介をしてきました。しかし、あまりイメージできていない人も多いのではないでしょうか。これからは事例に基づき、より具体的な登場人物や金額を用いて遺留分について説明します。
◯ 事例1(遺留分算定対象の贈与財産あり)
亡くなった方の遺言書に「遺産すべてを長男に相続させる」と記されていました。この方の遺産は5000万円です。そして、配偶者と直系尊属はすでに亡くなっています。
さらにこの方が亡くなる半年前に1000万円分の預金を長男に贈与していました。次男と長女が遺留分の請求をしたとして、受け取ることのできる遺留分は、以下の通りです。
相続人が子供のみであるため、子供の遺留分は1/2となります。これを、長男・次男・長女の3人で分けることになるので1/2にした遺産の1/3、つまり遺産全体の1/6が子供1人あたりに認められている遺留分です。
遺留分算定の基礎財産は積極財産5000万円に相続人である長男に対する贈与1000万円を足した6000万円です。
つまり、次男と長女は長男に対して6000万円の1/6、1000万円の遺留分の請求が行えます。
◯ 事例2(代襲相続人(被相続人の孫)が遺留分権利者に)
亡くなった方の遺言書に「遺産すべてを愛人に相続させる」と記されていました。この方の遺産は6000万円です。相続人は、配偶者の妻、長男、長女がいます。また、次男は以前に亡くなっており、孫にあたる次男の息子が代襲相続人となっています。各相続人が遺留分の請求をしたとして、受け取ることのできる遺留分は、以下の通りです。
相続人が配偶者と子供であるため、配偶者の遺留分は遺産の1/4です。子供の遺留分も同じく1/4となります。代襲相続人である孫も含めてこの1/4を3人で分割することになります。
つまり、妻は1500万円、長男と長女と孫はそれぞれ500万円ずつを愛人に対して遺留分の請求ができます。
このように、実際にご自身が置かれている状況から簡単に遺留分を計算することはできます。もし、基礎財産の価値が判明しているようであれば、計算式に当てはめ、ご自身の遺留分を計算してみましょう。
あなたは遺留分を侵害されていますか。
ご自身で請求が認められる遺留分の計算をしてみていかがでしょうか。
もし、遺言に記されていた内容が今回計算した額を下回っているようであれば、あなたは「遺留分を侵害されている」状態と言えます。
本来あなたが受け取るべきである遺産にも関わらず、それが貰えていないということになってしまっているわけです。
もしあなたが、「侵害されている遺留分を取り戻したい」と思うのであれば、ここから先の文章も読み進めてみてください。
遺留分を侵害されているあなたが取るべき行動
遺留分を侵害されているあなたが遺留分を取り戻すために行える行動に「遺留分減殺請求」があります。
遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)とは
遺留分減殺請求とは、遺留分が侵害されている相続人が、遺留分を侵害している他の相続人に対して侵害額を請求することです。
今までこの記事では「遺留分の請求が認められる」という書き方をしてきました。これは、遺留分は請求をしなければ、侵害分を取り戻すことができないからです。遺言の内容が遺留分を侵害しているからと言って自動で手に入るものではありません。ましてや、遺言自体が無効になるわけでもありません。
遺留分減殺請求をして初めて、侵害分の遺留分を取り戻せる可能性が発生します。
また、遺留分減殺請求の方法には特別の制約はなく、裁判所への申立(調停・審判・訴訟)を行う必要があるわけでもありません。
つまり、裁判外での交渉による回収もできる一方で、裁判所に訴訟を提起して回収するということも可能です。
裁判外で遺留分を請求するとは?
裁判外で請求するということは、つまり相手と話し合いにより交渉し、遺留分を返還してもらうということです。
相手方に遺留分減殺請求書を内容証明郵便で郵送し、そこから話し合いが始まるのが一般的です。もちろん、請求書を送ることは必須ではありません。話し合いだけで問題なく請求を受け入れてもらえるのであれば、その必要はないでしょう。
ただ、後でご説明するとおり、遺留分減殺請求には、1年という短い時効期間が定められていることから、遺留分減殺請求を1年以内に行使したかどうか争われることも少なくありません。遺留分減殺請求を行使したことを証明するためにも内容証明郵便で遺留分減殺請求書を送る方が良いと思います。
そして、話し合いがついたならば、相手と合意書を交わしておくべきです。支払いの約束を書面化することは欠かせません。
裁判で遺留分減殺請求を行う方法とは?
遺留分減殺請求をする裁判手続きには、調停(遺留分減殺にかかる物権返還調停)と訴訟(遺留分減殺請求訴訟)があります。
調停は、話し合いで決着がつかない時にとられる手段のひとつで、家庭裁判所での話し合いになります。
調停がまとまらない場合に訴訟を提起します。この訴訟は、一般の民事訴訟になるため、家庭裁判所ではなく、地方裁判所(請求金額が140万円を下回る場合は簡易裁判所)に訴訟を提起することになります。
遺留分減殺請求の流れについては「どれぐらい大変?遺留分減殺請求の方法とかかる期間や費用」の記事で詳しく紹介しています。
遺留分減殺請求は期限に注意!
遺留分減殺請求は、遺留分を侵害されている人であれば、誰でも行うことができるものです。しかし、請求を行う期限については注意が必要です。
遺留分減殺請求はいつでもできるというものではありません。遺留分減殺請求ができる期限が民法に定められているからです。その期限は2つの種類があります。
1つが、「遺留分権利者が相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年以内」というものです。
減殺すべき贈与または遺贈を「知った時」とは,単にその贈与や遺贈がなされた事実の存在を知ったというだけではなく,それによって自分の遺留分額が侵害され,さらに,減殺請求の対象となるということまで認識している必要があります。
通常は遺言書の内容を知ったときが多いと思います。
もう1つが、「相続開始時から10年以内」というものです。相続開始を知らなくても、相続開始から10年が経過すれば、完全に請求することができなくなってしまいます。
これら期限を経過していなければ、おそらくあなたは侵害された遺留分を求めて遺留分減殺請求を行うことができるでしょう。
遺留分減殺請求は弁護士に依頼をしましょう
ただ自分で遺留分を請求するだけであれば、弁護士に依頼せずにご自身で済ませることができるのではと感じるでしょう。しかし、実際に請求を行うとスムーズに事が進まないのが遺留分減殺請求でもあります。
請求相手にとっては、遺言書などにより一度自分の手に入った遺産を取り戻す請求が行われるわけで、すんなりと請求を認めたくないと思うのが自然な気持ちです。
お金が絡む問題である以上、一筋縄で解決することは難しいと考えるべきかもしれません。
また、相手から合意を得ることだけが難しいのではなく、遺留分減殺請求は手続きも煩雑で複雑です。特に遺留分を計算する際に、借金等があったり、評価の難しい会社の株式や不動産が入っている場合には、遺留分の計算や遺留分減殺請求を行使した結果どうなるかなどの処理が難しくなります。
そこで考えていただきたいことが、遺留分減殺請求を「弁護士に相談・依頼する」ということです。
弁護士は相続のプロであり法律問題解決のプロであります。解決が難しい問題を幾度も解決に導いてきました。あなたの要望を汲み取りながら、できるだけその要望に沿った解決をしてくれるでしょう。
特に相続人同士の関係が良くなく、問題が泥沼化してしまうようであれば、なるべく早い段階から弁護士に依頼することをお勧めします。
万が一遺留分減殺請求訴訟に至ってしまった場合には、本人もしくは弁護士による訴訟行為が必須になるためです。
ご自身で訴訟を起こすのは相当難易度が高いことかと思います。訴訟まで持ち込んでしまう見込みのあるようであれば、必ず弁護士に依頼しましょう。
訴訟に持ち運ぶかどうかに限らず、あなたが一刻も早い解決を望むのであれば、遺留分減殺請求の経験豊富な弁護士を頼るということを検討してみてはいかがでしょうか。
「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。
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もしあなたが相続のことでお悩みでしたら、ぜひともお問い合わせください。相続に関することであればどんな些細なことでも構いません。悩むあなたのパートナーとして親身に寄り添い解決を目指します。
なお、初回相談料30分5,000円(税別)いただいています。
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高島総合法律事務所
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代表弁護士:高島秀行
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