介護をした者・しなかった者同士の相続分を巡るトラブルはよくあります。「誰よりもたくさんのお金と時間をかけて介護で苦労をした、だからせめて遺産ぐらいは多く貰いたい。」あなたがそう考えるのは当然です。
では、介護していたことを理由に他の相続人よりも多めの遺産を受け取ることができるのでしょうか。
結論、多く受け取ることができるかもしれません。
今回の記事では、キーワードとなる「寄与分」とともに、その可能性について説明していきます。
読むことで、亡くなった方への介護が相続分決定にどう影響するのかが分かるようになるでしょう。
目次
相続分決定において「介護していた」ことはどのような影響を及ぼすのか
相続分決定において「介護していた」事実はどのような影響を及ぼすのでしょうか。
もし介護していたにも関わらず全く優遇が無いとしたらとしたら、介護をしていたあなたからすると納得できませんよね?
実際に、介護をしていたのに遺産が平等だった、優遇されていなかったということから納得がいかず、発生してしまう兄弟間の遺産相続トラブルはよくあります。
では、あなたは介護分を考慮しない遺産を受け取りそのまま泣き寝入りするしかないのでしょうか。いいえ、違います。あなたの相続分は今よりも増える可能性があります。
唯一、残っている方法が「寄与分」を主張するということです。
寄与分とはなに?寄与分が認められる要件を解説
亡くなった方の生前に、財産の維持や増加に影響するような貢献をした相続人がいるとします。そのような方を優遇しようという制度が「寄与分」です。寄与分が認められる貢献をした相続人は、貢献度を考慮した相続分を受け取ることができます。
そして、「介護」は「療養看護」として寄与分が認められるものの一つとされています。寄与分を主張することで、介護をしていたあなたはより多くの相続分を受け取れるかもしれません。
しかし、亡くなった方の介護をしていたからといって、必ずしも寄与分が認められるとは限りません。
ここで重要なのは、「財産の維持や増加に影響するような貢献をした」事実があったどうかということです。
例えば、亡くなった方が生前ヘルパーがいないと生活ができない状態だったのに、あなたが介護ヘルパーに介護を依頼することなくご自身で介護をしていたとしましょう。その場合、本来介護ヘルパーに支出されるはずだった費用が支出されなかったことになります。つまり、亡くなった方の財産の維持に貢献したわけです。
このような例の場合、行ってきた介護が寄与分として認められる可能性が十分にあります。
他方、体の不自由度合いが高くなく、特に介護ヘルパーに頼むほどではない方に対して介護を行ってきたとしましょう。このような場合、財産の増加にも維持にも影響するような貢献をしたとは言えない可能性が高いです。
子が親の面倒を見たとしても、親子間の扶養の範囲内だとして、寄与分が認められない可能性もあります。
寄与分を認める・認めないの間に明確な基準はありません。法律家の間でも解釈に違いが出るほど難しい問題です。
しかし寄与分は、介護で苦労したあなたを優遇する唯一の策です。あなたが行ってきた介護が、亡くなった方の財産の維持や増加に貢献したか、考えてみるのが良いかと思います。
寄与分を優先すると言うことは遺言には従わなくて良いということ?
寄与分という制度を知って、あなたが疑問に思うことがあるでしょう。果たして「半分相続させる」という遺言よりも「寄与分を優先していいのか」ということです。
結論、今回のように「兄と弟で遺産を半分ずつに」という形で相続割合が遺言によって指定されている場合、寄与分の主張をすることはできます。
つまり、遺言の内容に優先して寄与分が認められるということです。
これは、遺産それぞれが最終的に誰のものになるのか確定していないからです。この後に行われる遺産分割において、誰がどの遺産を相続するのか協議することになります。寄与分の主張、そして寄与分による分割割合の修正をその中で行うことができるからです。
一方で、すべての遺産が誰のものになるのか指定している遺言の場合は、原則寄与分の主張はできません。
例えば、「残った銀行預金を弟に、実家の土地含めた残りの遺産全てを兄に相続させる」と遺言書に記述があった場合では、寄与分は主張できないことになります。
これは、全遺産がすでに割り付けられているためです。銀行預金はお父さんの死亡後、すぐに弟に継承されているため、改めて寄与分を主張した遺産分割はできません。
介護の寄与分に明確な計算方法はない
では、もしあなたに寄与分が認められるとして、実際にどのくらいの遺産がもらえるのか気になりますよね。
しかし、寄与分は、様々な事情を考慮して、一般的に割合で定められることから、いくら亡くなった方に対して寄与していたのか判断するのは難しいです。では、どのようにして寄与分の割合を決めるでしょうか。
一般的に、介護を行った期間や内容、頻度、ヘルパ―を雇ったとしたらいくらかかっていたか、亡くなった方とあなたの関係性、それらを総合的に考えて相続人同士で話し合って決めます。
もし相続人の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所へ調停や審判の申立てを行いそこで寄与分の割合を決めることになります。
寄与分を主張する際の流れ
そもそも寄与分はどうすれば受け取ることができるのでしょうか。さらに具体的に寄与分を主張してから獲得するまでの流れについて確認していきましょう。
寄与分を主張して話し合い
寄与分は主張しない限り、認められないものです。まずは「自分は介護したのだから、その分相続分を増やして欲しい」ということを主張しましょう。
しかし、ただ主張しても、その寄与分は認められるものではありません。相続人全員の同意を得なければならないからです。
もし相続人全員の同意が得られれば、そこで寄与分を合算した相続分をあなたは受け取れます。
しかし、ほとんどのケースではそう簡単にはいきません。
他の相続人にとってあなたの寄与分を認めるということは、自分の相続分が減ることを意味します。したがって、よっぽどあなたの貢献が、全員が納得するものでない限り話し合いのみでの解決は難しいでしょう。
家庭裁判所へ調停・審判の申立て
解決しない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てます。「寄与分を定める調停の申立」と呼ばれています。
調停なので裁判ではありません。争っている当事者の間に調停委員が入り、両者の妥協点を見出します。「第三者を含めた話し合い」と考えてください。
さらに、調停の中でも解決しない場合には「寄与分を定める審判の申立」を行います。審判とは、裁判官が当事者から提出された書類や資料に基づいて判断を決定する手続きのことです。
寄与分の主張を認めるかという争いでは、この審判まで行われることがよくあります。兄弟同士と言えども、ここまで激しく対立してしまうのが、介護による寄与分をめぐる争いです。
寄与分を主張する際に用意すべきものは
介護において寄与分を主張する際、介護活動に関する客観的な書面を用意しましょう。例えば以下のようなものです。
・亡くなった方の介護度を示すもの
診断書、カルテ、介護認定などです。
・介護のために仕事を休んだ記録
実際に休んだ日付の記録、その欠勤による減収分の記録などです。
・介護に当てた時間・内容がわかるもの
日記などが該当します。
これらを用意することにより、寄与分があったことを証明しましょう。
介護に苦労したのに、相続分に納得ができないという方へ
寄与分が関わる場合は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。あなたが受け取る相続分が増えるかもしれないからです。
あなたが行ってきた介護はそもそも寄与分として認められるものなのか、そして認められるとしていくらの寄与分として認められるものなのか。
先ほどもお伝えした通り、法律家であっても解釈が分かれるものであります。ましてやこれを法律に関わっていない方が判断するのは非常に難しいです。
「親の介護で他の相続人よりも一層の苦労をした、それにも関わらず遺言書の内容が介護分を考慮していない」このような場合には、寄与分を求めて弁護士に相談しに行くことをおすすめします。きっと今より多くの遺産を受け取れるかもしれません。
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