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不動産の遺産相続で争いが起こりやすい理由
土地建物やマンション、アパートと言った不動産が遺産相続で争いが起こりやすい主な理由は、不動産は、現金や預金と異なり、相続人の相続分通りに分けることができないということにあります。
3000万円の預金を相続人である子ども3人で分けるという場合、1人1000万円ずつ分ければよいので簡単です。
しかし、不動産の場合、1つの不動産を3つに分けることができる方が稀で、3つに分けてしまうと、道路付けや面積、間口の問題などから、不動産としての価値が無くなってしまうことの方が多いと思います。
不動産の場合、下記で説明するとおり、分割の仕方には、大きく分けて4つあります。その4つの分割方法のうち、どの分割方法を取るかで争いになりますし、そのうちの1つの方法を取るとしても、不動産の評価や管理、線引の方法などどの方法を取るにしても、争いとなりやすいのです。
以下、不動産の遺産分割の方法について説明します。
不動産の遺産分割方法
先ほど説明したとおり、不動産の遺産分割方法には、主に4つあります。
① 共有分割
共有分割とは、各相続人が相続分に応じて共有する遺産分割方法です。
例えば、子供3人で、遺産である不動産を分けるときに、共有持ち分を3分の1ずつの共有にするのがこの方法です。
② 現物分割
現物分割とは、各相続人の相続分に応じて、遺産である不動産を実際に分けて、それぞれ分けた不動産を各相続人が取得する遺産分割方法です。
例えば、子供3人で、遺産である土地を、3つに分割して、それぞれを各相続人が取得するのがこの方法となります。
③ 代償分割
代償分割とは、特定の相続人が遺産である不動産を取得して、他の相続人に代償金を支払う遺産分割方法です。
例えば、子供3人で、遺産である土地建物(評価額3000万円)を相続するときに、子供Aが土地建物を1人で相続し、他の子供BCにそれぞれ1000万円ずつ(合計2000万円)の代償金を支払うという方法がこの方法です。
④ 換価分割
換価分割とは、遺産である不動産を売却して、代金を相続分で分けて取得する遺産分割方法です。
例えば、子供3人で、遺産である土地建物を相続するときに、土地建物を売却して、その代金3000万円を1000万円ずつ分けるのがこの方法です。
各不動産の遺産分割方法のメリット・デメリット
① 共有分割のメリット・デメリット
共有分割のメリットは、何と言っても簡単であることです。相続分に応じて共有にすればよいだけですから、分けるのが簡単です。
しかし、デメリットがあります。不動産が居住用の土地建物であると、相続人のうち特定の人しか使用ができません。
そうなると、他の相続人は使用している相続人から相続分に応じた賃料などをもらわないと不公平になります。
しかし、実際に共有分割にして相続人の誰かが継続して使用していても、他の相続人に対し賃料を支払うケースは稀で、不平等な結果となることが多いです。
では、賃貸用の土地建物であれば、賃貸して、賃料を相続分(共有持ち分)で分ければ、公平となるように思えます。
しかし、賃貸用の土地建物の管理は結構労力がかかるところ、その管理を誰がするのか、管理をする者は、管理手数料をもらえるのか、無償でするのかなど揉める可能性があります。
不動産が居住用でも、賃貸用でも、相続人の中には、不動産でなくお金で欲しいという相続人もいると思います。
この場合、共有分割では、何の解決にもなりません。
その場合、共有状態を解消したいとして共有物分割請求がなされてしまうことになり、不動産をどうやって分けるかについてまた問題となってしまうこととなります。これは共有分割の一番のデメリットとなります。
② 現物分割のメリット・デメリット
現物分割のメリットは、相続人の持ち分に従い、土地や建物を実際に分けてしまうので、その後他の相続人が売りたければ売れるし、貸したければ貸せる状態になり、各相続人が各相続人の意思で自由に処分できるようになることが挙げられます。
しかし、デメリットがあります。
現物分割に適する不動産があまりないということです。
不動産は土地と建物のセットで、遺産となっていることが多いですが、土地の上の建物を2つや3つに切るということは、かなり困難です。
土地についても、2つや3つに切っても、その切ったそれぞれの土地を売ったりできるような大きな土地が遺産として残されるということはあまりないと思います。
仮に、現物分割が可能な土地でも、道路付けや間口との関係でどのように境界を引いて分筆するかは問題となりますし、道路付けがよい方は、経済的価値が高いので、同じ面積にすると、不平等になり、それを平等にして分けるのもなかなか困難となります。
③ 代償分割のメリット・デメリット
代償分割のメリットは、特定の相続人が金銭を支払うことによって解決できるので、測量、仲介などの売却手続や費用が不要となることです。譲渡所得税もかかりません。
しかし、デメリットもあります。
まず、複数の相続人が取得したい場合、誰が不動産を取得するのかを決めなければなりません。
不動産を取得したい相続人は、代償金を支払う資力を持っている必要があります。
よく揉めるケースは、不動産は取得したいと主張しているけれども、支払うお金はないから払えないというものです。もちろん、このようなケースは通りませんから、代償分割はできないということとなります。
また、代償分割では、不動産を実際に売るわけではないので、その不動産がいくらなのかという不動産の評価で争いになります。
不動産を取得する方は、できるだけ安くしたいことから、そんな価格で売れるはずがないと主張し、お金でもらう方はできるだけ高くしたいから、もっと高く売れるはずと主張します。
不動産の価格で話が付かなければ、裁判所で裁判所が選任した不動産鑑定士に鑑定をしてもらって不動産の評価を決めることとなります。
④ 換価分割のメリット・デメリット
換価分割のメリットは、不動産を売却することにより、相続人で分ける金額が明確になり、売った代金を相続分に従い分けることは揉める要素がなく簡単なことです。
弁護士に依頼する遺産相続の場合、相続人間でうまくコミュニケーションを取って解決することができないケースが多いです。
そのような場合は、後腐れが無いように、換価分割ができるのであれば、換価分割をお勧めします。
換価分割のデメリットは、不動産は、価値ある財産なので、あるいは先祖伝来の不動産は代々引き継いでいくものなので、売りたくないという考え方の相続人がいると売却できないことになるということです。
また、高齢の配偶者などが住んでいる不動産では、売却すると住居を移転しなければならないことから、賛成をしてもらうことも難しいでしょう。
このように、不動産の売却を反対する相続人がいると、換価分割ができないということがデメリットとなります。
ただし、不動産売却を反対する相続人が適正な代償金を支払えないという場合は、遺産分割調停や審判により換価分割の方法をということになります。
争いを起こさないための方法
不動産の遺産分割について、争いを起こさないようにする方法は、遺産を残す被相続人となる方に、遺言書を書いてもらうことです。
平等に分けるとしても、売って代金を分けるのか(換価分割)、誰かが全部取得して代償金を支払うのか(代償分割)を遺言書に書いていなければ、その分割方法を巡って争いが生じてしまいます。
共有にするという遺言は、共有状態を解消したい共有者から共有物分割請求がなされて、結局争いが生じることになるので、遺言書を書いてもらうときは、共有にするような遺言は避けてもらうようにしましょう。
遺言がない場合、不動産の遺産相続では、遺産分割方法を巡って争いになることは仕方がないことです。
まずは、弁護士に相談して、自分の遺産相続では、不動産の遺産分割方法のうちどれを取ったらよいのか、他の相続人が反対した場合はどう反論するかなど方針を決めてから、相続人間で遺産分割協議をするのがよいと思います。
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