遺留分減殺請求における調停。話し合いをしても解決の見通しがつかなかった場合に、次の手続きとして待ち受けているのが調停です。
今回の記事では、この調停について説明します。
この記事を読むことで、調停の流れや申立に必要な書類・費用などを知ることができます。
目次
遺留分減殺請求の全体の流れ
調停について知る前に、遺留分減殺請求の全体の流れについて知っていきましょう。
遺留分減殺請求は以下の順番によって進んでいきます。
① 遺留分減殺請求の意思表示
② 話し合い
③ 調停
④ 訴訟
③調停が今回の記事で説明する、遺留分減殺請求の調停です。
遺留分減殺請求は「遺言や贈与などにより、法律で最低限認められている相続分(遺留分)を得ることができなかった人が、その分多くもらっている人に対して『返してほしい』と請求すること」を言います。
この「返して欲しい」という意思表示が、①遺留分減殺請求の意思表示になり、ここから遺留分減殺請求が開始します。
詳細な「遺留分減殺請求全体の流れ」について知りたい方は「遺留分減殺請求は大変?方法・かかる期間や費用」をお読みください。
遺留分減殺請求の調停とは
遺留分減殺調停とは、家庭裁判所の調停委員会に当事者の間に入ってもらい、遺留分の返還について話し合うことを言います。手続きの正式な名称は、「遺留分減殺による物件返還請求調停」です。(以下、「遺留分減殺調停」)
当事者間だけでの話し合いでは解決できない場合に用いられる手続きです。
この調停手続では、調停委員が当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、話合いを進めていきます。
なお、この調停は、あくまでも話し合いであり訴訟ではありません。
遺留分減殺調停の申立(もうしたて)
遺留分減殺調停は申立てを行うことにより開始されます。ここでは、この遺留分減殺調停の申立について説明していきます。
遺留分減殺調停の申立人
遺留分減殺調停の申立ができるのは以下に該当する人です。
・遺留分権利者
・遺留分権利者の承継人
遺留分権利者は、被相続人(亡くなった人)の配偶者・子供・直系尊属(父母や祖父母)です。
遺留分権利者の承継人とは、遺留分権利者の相続人や相続分譲受人が該当します。
ただしどちらも、相続欠格者・相続人廃除の扱いを受けた者・相続放棄をした者のいずれかに該当すれば、その者は相続権を有しないので、遺留分減殺調停の申立をおこなうこともできません。
遺留分減殺調停の申立先
遺留分減殺調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先となります。
相手方が複数いる場合には、そのうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
また、当事者の間で合意により申立先となる家庭裁判所を決めることもできます。
遺留分減殺調停の申立に必要な書類
・申立書及びその写し1通
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の子どもおよび代襲者で死亡している人がいる場合、その子どもや代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
・不動産登記事項証明書(遺産や贈与財産に不動産が含まれている場合のみ)
・遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
・相続人が父母であり、父母の一方が死亡している場合には、その死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
遺留分減殺調停の申立に必要な費用
・収入印紙:1200円
・連絡用の郵便切手:申立を行う家庭裁判所へ確認してください
遺留分減殺調停の申立が受理されたら
調停申立が家庭裁判所により受理されると、当事者には調停期日の通知が送られてきます。
指定された日時に裁判所へ出頭して調停に参加することになります。
この調停は、先ほども申しましたが、訴訟ではありません。そのため、非公開でおこなわれます。
さらに、当事者同士で顔を合わせることもありません。相手方とは別々に裁判官や調停委員と面談をして会話をし、意見を述べたり主張したりします。
これらを主に調停委員が聞き取ったうえで、和解案をまとめ、裁判官の前で、当事者全員が合意をすれば調停成立となります。
調停によってお互いが合意したら(調停成立したら)
遺留分減殺調停によって当事者間での合意を取ることができれば、調停調書が作成されます。
そして、その合意内容にしたがった遺留分に相当する支払いがおこなわれることになります。
調停でも合意ができなければ(調停不成立になったら)
調停をおこなったものの、両者ともに譲り合うことができず、合意にいたらず終わってしまうこともあります。これは珍しいことではありません。
これらの場合、「調停不成立」という扱いにとなります。
調停不成立となったら、遺留分減殺請求訴訟に移るのが一般的です。
家事事件の多くは、調停が不成立となったら自動的に審判へ移行します。
しかし、遺留分減殺請求の場合は、調停から訴訟に移る際、別途訴訟を提起しなければなりません。審判ではなく訴訟になるからです。
調停前置主義により、いきなり訴訟を提起することは原則できない
遺留分減殺や離婚など家事事件においては、原則として「調停前置主義」がとられます。
これは「訴訟を起こす前にまず調停で解決を目指す」というもので、裁判ではなく調停から先に始めなくてはならないというものです。
早く裁判で解決したい方にとっては不満の募るものかもしれませんが、調停前置主義がとられることにも理由があります。
一つは、家庭内の争いをいきなり訴訟手続きに持ち込み、公開の場で処理すべきではないこと、もう一つは、法律を画一的に適用して解決するのではなく、柔軟な対応による解決を目指すべきであること、が挙げられます。
家族や親族間といった人間関係は今回の事件によって始まったものでもなければ、今回の事件で終わることもありません。今後もずっと続くものです。
だからこそ、今までの、そして今後の当事者間の人間関係についても考慮しつつ進めるべきだとして調停前置主義が採られているのです。
遺産分割については、法律上は調停前置主義が取られていないので、いきなり遺産分割審判の申立をすることができますが、裁判所は、基本的に調停に回す扱いを取っています(調停に回すことを「付調停」と言います)(事実上の調停前置主義)
遺留分減殺調停の調停では弁護士に相談すべき
調停は申立自体は複雑ではなく、弁護士の力を借りずともできるかもしれません。
しかし、いざ調停が始まると、裁判官や調停委員に対して自分の意見を主張しなければなりません。そして、遺留分減殺請求は法律上の権利ですから、その主張は、法律上の主張でなければなりません。
裁判官や調停委員は客観的な証拠や状況から解決への判断をおこないます。つまり、あなたが感情的にいかに説得しようとしたとしても、まずそれは無意味ですし、あなたにとって有利に働くことはないでしょう。
遺留分減殺調停においては、証拠と法律上の理論に基づいて裁判官や調停委員相手に主張をする必要があるのです。
また、相続が泥沼化している場合は調停も長引く可能性もあります。
一刻も早い解決を望むのであれば、相続のプロである弁護士に相談・依頼すべきして、味方につけるべきです。
遺留分減殺請求は相続の案件の中でも弁護士に依頼すべきと言われているので、ぜひあなたも検討してみてください。
そして、相談・依頼する弁護士は、管轄裁判所に近い弁護士事務所に所属する弁護士にしましょう。
もし管轄裁判所から遠い弁護士に依頼すると、その弁護士のかかる交通費や日当も負担しなければなりません。
弁護士費用を安く抑えたいのであれば、管轄裁判所から近い弁護士に相談すべきです。
「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。
▶︎ お問い合わせ・ご相談・ご依頼はこちらから。
▶︎ 高島総合法律事務所について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
もしあなたが相続のことでお悩みでしたら、ぜひともお問い合わせください。相続に関することであればどんな些細なことでも構いません。悩むあなたのパートナーとして親身に寄り添い解決を目指します。
なお、初回相談料30分5,000円(税別)いただいています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高島総合法律事務所
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1-11-7 第二文成ビル9階
(虎ノ門駅から徒歩4分・霞ヶ関駅から徒歩6分)
代表弁護士:高島秀行
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー