いつ弁護士に相談・依頼すべきか分からない。
弁護士に相談するのは、もっと問題が深刻化してからで十分間に合う。
今の段階では何を弁護士に相談すればいいのか分からない。
意見が対立しているけど、自分たちだけで解決するから弁護士には頼らない。
遺産相続トラブルが発生し、このように考えている方はいませんでしょうか。
相続の問題において問題が大きくなる前の早い段階で弁護士に相談・依頼することがとても重要です。今回は、遺産相続において弁護士に相談・依頼すべきタイミングをご紹介します。
目次
いつ弁護士に相談・依頼すべきか、適切なタイミング
相続の問題にあたって弁護士の助けを借りる方法に、「相談」と「依頼」があります。それぞれに適切なタイミングをご紹介します。
① 弁護士に「相談する」適切なタイミング
相続発生後他の相続人と話し合う前が最も適切なタイミングです。
今これを知って、「そのタイミングではまだ早いのではないか」「問題が噴出してからすべきではないか」とお思いになった方もいるかと思います。
しかし、相続では、
・相続人が誰であるか(愛人や内縁の妻、前妻の子、兄弟の子、いとこなど)
・遺産(相続財産)の対象となるのは何か(生命保険、退職金、遺族年金、生前贈与、株式、使い込まれた預金など)
・遺産はどう分けたらよいのか(共有にするのか、一人が相続して対価を支払うのか(代償分割))
・遺産の評価はどうするのか
・遺産は売って分けるのか(換価分割)
・生前贈与があった場合(特別受益)や死ぬ前に面倒を見ていた場合(寄与分)はどう遺産分割に反映させればよいのか
・遺言があった場合はどうするか
など、多種多様な問題があります。
相続発生後、他の相続人と話し合う前に、あらかじめ弁護士に、自分が当事者となった相続について、法律ではどうするのかを聞いておきましょう。他の相続人から指摘や主張を受けたときに、対応ができることとなり、そこで解決してしまう可能性が高くなります。
② 弁護士に「依頼する」適切なタイミング
元々仲が良くない兄弟同士、前妻の子と後妻、あるいは後妻の子、相手が亡くなった方の財産を使い込んでいる可能性があるなど、あまり相手と自分で直接交渉をしたくないケースでは、最初から弁護士に依頼した方がよいでしょう。
このようなケースでは、当事者間で話し合いをすること自体が難しいのですから、遺産分割協議を自分たちでまとめることはかなりハードルが高いと思います。
その他、一般の相続のケースでは、まず、当事者間で話し合ってみて、意見が根本的に違って、話し合いが進みそうにない時が弁護士に依頼する適切なタイミングです。
弁護士への依頼は、相談と比べて高額な費用が必要なため、躊躇してしまうかと思います。話し合いがうまくいかなないと感じても、「弁護士に頼らず自分たちだけで解決しよう」「本当に解決が難しいと感じてから弁護士に頼むことにしよう」と、依頼を先延ばしにしてしまう方が多くいます。
しかし、「いずれ解決するだろう」と考えて相続人同士のみで話し合いを継続しても解決に向かうことは滅多にありません。
話し合いの流れを変えるという意味でも、依頼を行い弁護士という第三者に間に入ってもらいましょう。一瞬で大きく流れが解決に向かうかもしれません。
以上が、相続問題において弁護士に相談・依頼する適切なタイミングです。
早めに相談・依頼すべき3つの理由
ここまで、相談・依頼する適切なタイミングを紹介しました。考えていたよりも早いと感じられた方が多いかと思います。
では、なぜ早期に相談・依頼すべきなのか、その理由について紹介していきます。
① 有利に話し合いを進めることができる
早い段階から弁護士に相談することで、話し合いを有利に進めることができます。
法的な側面から主張を行うことで、その主張に説得力を持たせることができます。根拠が明確となっているので、他の相続人に対して納得感を感じてもらうことができるでしょう。
また、万が一、将来的に遺産分割調停や遺産分割審判などにより裁判所で解決を目指すようになった場合、交渉の段階から、法律や証拠に基づいた自分の正当性を主張している側が有利になることが多いです。
自分の利益を守るためにも、早い段階から弁護士が関わることは大切です。
② 様々な法律問題が存在し、解決に時間がかかることがある
相続の問題は複雑で時間がかかるものです。
そもそも相続とは、人が長い期間築いてきた財産を、いっぺんに相続人に引き継がせるものであります。さらに当事者が多数存在することもありますし、場合によっては亡くなった方の意思も汲み取らなければなりません。
これらを考慮すると、様々な法律問題の介入が存在し、解決に時間がかかるのも致し方ないことなのです。
様々な法律問題とは、例えば、「遺言があるとしてその遺言は有効なものなのか」「遺産の範囲はどこまでなのか」「寄与分や特別受益といった法定相続分を増減させる事由はあるのか」というものです。
これらはただ条文に則って判断できるものでもなく、それぞれの事案の状況に応じた判断が必要です。証拠に基づき状況の解明が必要なため、早期での相談が重要となります。
③ 期限のある法律行為が存在する
遺産相続に関わる手続きの中には、期限が存在するものがあります。
相続に関係するものでの期限は主に以下のようなものがあります。
3カ月 | 相続放棄 |
3カ月 | 限定承認 |
4カ月 | 準確定申告 |
10カ月 | 相続税申告・納税 |
1年 ※ | 遺留分減殺請求 |
※ 遺留分減殺請求の期限は、相続開始・減殺すべき贈与・遺贈のいずれかがあったことを知った時から1年です。
せっかく認められている権利も期限を過ぎてしまうと行使できなくなってしまいます。
特に、相続放棄を検討中の方は、なるべく早く弁護士に相談すべきです。期限までの期間が短い上に、財産を調査しなければならないので時間がかかります。期限を過ぎてしまうと、単純承認したとみなされ、財産を全て相続することになってしまうので、検討している方は弁護士に相談しましょう。
以上が、早い段階で弁護士に依頼・相談すべき理由です。他の分野の問題以上に、相続分野の問題は早期に行動を起こすことが大切です。
早期相談のススメ
遺産分割協議も相続人全員が相続分に納得して話し合いだけで解決すればいいのですが、円滑に事が運ばないのが遺産相続です。
少しでも意見が分かれている、トラブルになりそうという場合は早めに弁護士に相談することをお勧めします。事態が大きくなってから相談した方が良いという理由は一つもありません。抱えているのがほんの些細な心配事であっても、相談に早すぎるということはありません。
また、相談したからといって、依頼しなければならないという決まりは一切ありません。
まずは、相談してみてそこで正しい知識を得るということも重要です。それにより自身が置かれた状況や現在起きている問題を法律的な視点から見ることができ、冷静に話し合いに臨めるようになるかもしれません。
最もよいのは、最初に申し上げたとおり、相続が発生後他の相続人と話し合う前に、相続について正しい法律知識を得るために、よく相続で問題となりそうな点が何かを把握するために、弁護士に相談することです。
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