遺留分

遺留分減殺請求は大変?方法・かかる期間や費用

「遺言書に書かれていた内容が、自分の遺留分を侵害していた。遺留分減殺請求をすれば自分の相続分が増えるらしいけど、請求はどれぐらい大変なの?どうやってやるの?」という疑問をお持ちの方、多いのではないでしょうか。

今回の記事では、遺留分減殺請求をしようか迷っている方したいけどどうやって行うのかわからない方に向けての記事です。

この記事を読めば、遺留分減殺請求を行う方法、ならびに行うことによってあなたにかかる負担がイメージできるかと思います。

「遺留分減殺請求をされている・受けている」という方はこちらの記事「遺留分減殺請求の意思表示がされたらすべき4つのこと|内容証明郵便は無視しても良い?」をお読みください。

遺留分とは?

まずはじめに「遺留分についてまだよく分かっていない」という方もいるかと思うので簡単に説明します。すでに理解されている方は、次の項目にお進みください。

遺留分の制度とは「遺言の内容に関わらず、特定の相続人に対して最低限度の相続分を保証する制度」のことです。「少なくともこれだけはもとからの法定相続人に残してあげなさい」という割合が決まっており、その割合が遺留分です。

「遺留分」については、こちらの記事「遺産相続でトラブルが起きやすい、遺留分とは何か?」もあわせてお読みいただくと理解しやすいかと思います。

 

あなたには遺留分は認められている?

遺留分が自分に認められているのか、遺留分を受け取る権利が自分にはあるのか悩む女性

こちらもすでにご存知の方もいるかと思いますが、改めてあなたに遺留分が認められているのかを確認しておきましょう。

亡くなった方から見て、以下の3つのいずれか(遺留分権利者)に当てはまる方に遺留分は認められています。

・配偶者(妻・夫)
・子ども
・直系尊属(父母・祖父母)

ただし、亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分が認められていないので注意が必要です。兄弟姉妹には遺留分が認められないので、兄弟姉妹の子供が代襲相続人となった場合も遺留分は認められません。

 

遺留分減殺請求とは?

では「遺留分減殺請求」とは何でしょうか。

遺留分減殺請求とは「遺留分を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している他の相続人に対して侵害額を請求すること」です。

少々難しいかと思いますので簡単に説明しますと、「遺言や贈与などにより、法律で最低限認められている相続分(遺留分)を得ることができなかった人が、その分多くもらっている人に対して『返してほしい』と請求すること」を言います。

 

あなたは遺留分減殺請求を行う資格がありますか?

・条件1:遺言の内容があなたに認められている遺留分を下回っている。
・条件2:相続欠格者に当たらない。
・条件3:遺留分減殺請求の時効を経過していない。

これら3つの条件を満たす場合のみ、遺留分を侵害している相手方に対して遺留分減殺請求をおこなえます。あなたが条件に当てはまるか確認するために一つずつ見ていきましょう。

遺言の内容があなたに認められている遺留分を下回っている

遺留分の割合のルールは、直系尊属(父母や祖父母)のみが相続人のときは3分の1その他の方が相続人のときは法定相続分の2分の1となります。

そして、あなたに認められている遺留分の割合は、被相続人からみた立ち位置と、相続人の組み合わせによって決まります。

以下が代表的な組み合わせです。

子供が複数人いる時には、その子供の人数で等分します。例えば、相続人が配偶者・子供2人の場合であれば、配偶者は【4分の1】子供は4分の1をさらに2人で割った【8分の1】ということになります。

以上を参考に、まずは自分に認められている遺留分の割合を調べましょう。その割合から遺産全体のうちいくらが遺留分なのか実際の値を計算します。

そして、今度はその値と遺言に記されたあなたの相続分を比較します。相続分の方が少なければ「遺留分を下回っている・侵害している」ので【条件1】を満たすことになります。

相続欠格者に当たらない

相続欠格者とは「特定の不正行為を行ったことを理由に相続人となることができない人のこと」です。具体的には以下のいずれかに該当する人のことです。

① 故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にあるものを死亡するに至らせまたは至らせようとしたために刑に処せられた者。
② 被相続人の殺害されたことを知ってこれを告発せず、または告訴しなかった者。
③ 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者。
④ 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者。
⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者。

これらに当てはまらなければ相続欠格者ではないので【条件2】を満たすことになります。

遺留分減殺請求の時効を経過していない

遺留分減殺請求には時効があります。この時効を過ぎると、遺留分減殺請求できなくなります。

遺留分減殺請求をおこなうことのできる期間は「相続の開始・贈与または遺贈があったことを知ってから1年間」です。
※相続の開始・贈与または遺贈があったことを知らなければ、相続開始から10年間。

この1年間という期間が経過していなければ【条件3】を満たすことになります。

 

ここまで紹介した3つの条件を満たすのであれば遺留分減殺請求することができます。

 

遺留分減殺請求の手順

遺留分減殺請求できるのか確認したところで、ここからは遺留分減殺請求をおこなうに当たっての手順を紹介します。

① 遺留分減殺の意思表示

遺留分減殺請求をするにはまず、「あなたが侵害している遺留分を返してください」という意思表示をすることが求められます。

この方法には特に指定はありません。しかし、内容証明郵便を相手方に送付するのが一般的です。のちに法的手続きを取ることになった際、「意思表示を行なった」という証拠として残すことができるからです。

内容証明郵便の書き方や書く際の注意点を「遺留分減殺請求をする方が参考にすべき、内容証明郵便のサンプルと書き方」で紹介しています。

また、内容証明郵便以外でも、口頭や電話、メールなどでも意思表示したことになります。しかし、可能であるならば、後で証拠として提出できるように内容証明郵便で行いましょう。

意思表示を行なった結果、それだけで相手方が遺留分を返してくれるのであれば良いのですが、なかなかそう円滑にはいきません。相手方にとっても自分の財産に関わってくるものです。

相手方と意見が合わない場合、以下の流れで遺留分を取り戻していくことになります。

② 話し合い

相手方と直接交渉をし、遺留分を返してもらうことを目指します。ここでは間に専門家を挟まなければならないという決まりはありません。当事者だけで交渉を行うことができます。

しかし中には、「相手方と直接会うことを避けたい」「会うことができない」「専門家に依頼したい」という事情を抱えている方もいるかと思います。その場合には、弁護士に代理で話し合いを行なってもらうというのも一つの手です。

話し合いがまとまれば、ここで遺留分減殺請求は完了です。両者の間で合意書を作成し、遺留分を受け取る流れになります。

もし、話し合いを経てもまとまらないようであれば、③調停をするか、④訴訟をするかということとなります。

③ 遺留分減殺請求の調停

家庭裁判所へ調停の申し立てを行います。調停なので裁判ではありません。

調停は、交渉と同じ、話し合いです。ただし、調停では、あなたと相手方の間に「調停委員」という専門家が入り、それぞれが調停委員を通じて話し合いを行います。そして、調停委員がお互いの妥協点を探ります。

万が一、この調停を経ても、決着がつかないようであれば、最終手段である④訴訟に移ります。

④ 遺留分減殺請求の訴訟

この訴訟は、一般の民事訴訟になります。裁判官があなたと相手方、双方から提出された書類や資料に基づいて判断を決定します。

請求する遺留分の額が140万円以下であれば簡易裁判所へ、140万円を超える場合には、地方裁判所へと訴訟を提起することになります。

訴訟においては、高度な法律知識が求められるため、弁護士に相談・代理の依頼をするケースが多いです。

 

上記の流れを経て、あなたは遺留分減殺請求を行うことになります。

ここからは、もしあなたが遺留分減殺請求をするとして、どの程度大変なものなのか、遺留分減殺請求にかかる期間・費用の面から紹介します。

 

遺留分減殺請求をしてから遺留分を受け取れるまでの期間

遺留分減殺請求が終わるまでにかかる期間

実際に遺留分を受け取れるまでにどのぐらいの期間かかるのか、気になる人は多いかと思います。

結論から申しますと、遺留分減殺請求にかかる期間は、「場合によって異なります」としか言えません。

意思表示だけで相手方が遺留分を返してくれるケースもありますし、決着が最後まで付かず訴訟まで長引いてしまうケースもあるからです。そのため、一概にこれくらいの期間で終わりますと言うことは難しいのです。

調停だけを取って見ても、調停回数が数回で終わることもあれば、10回以上に上ることもあります。そして、一般的に1~2ヶ月に1度行われるという頻度で進みます。

話し合いだけで解決しそうになく、調停までしなければならないようなことになってしまえば、相当長い期間がかかることが予想されます。しかし、その期間を経れば遺留分を受け取れるかもしれないことを考えますと、致し方のないことなのかもしれません。

 

遺留分減殺請求にかかる費用

期間と同様、かかる費用も場合によって異なります。弁護士に依頼するかしないかで大きく変わってきます。

参考に費用をご紹介します。

◯ 調停の申し立てに必要な費用

・収入印紙:1200円

・連絡用の郵便切手:申立を行う家庭裁判所へ確認してください

◯ 訴訟に必要な費用

訴訟の提起の際には、請求する額に応じて訴訟費用と、郵便切手の予納が必要です。

・訴訟費用
訴訟費用として遺留分の価額に応じて下記の額の収入印紙を購入、訴状に添付します。

請求する額 手数料
100万円以下 10万円ごとに1,000円
100万円を超え500万円以下 20万円ごとに1,000円
500万円を超え1000万円以下 50万円ごとに2,000円
1000万円を超え10億円以下 100万円ごとに3,000円

例えば、遺留分として250万円の請求をするとします。

・100万円までの部分:10,000円
・100万円から250万円の部分:8,000円

合計で18,000円の収入印紙を添付することになります。

・郵便切手の予納:提起する裁判所によって違いがあるので、提起先の裁判所へ確認してください。

弁護士に依頼せず、自分で全て行うのであれば、それほど費用がかかるものではないことがお分かりいただけたかと思います。

◯ 弁護士に依頼した場合の費用

ここでは、遺留分減殺請求を弁護士に依頼した際にかかる弁護士費用の相場を紹介します。

・相談料:無料~5,000円(30分あたり)

・内容証明郵便による遺留分減殺請求意思表示代理費用:3万円~5万円

話し合い以降、遺留分減殺請求を弁護士に依頼する際には、以下の弁護士費用がかかります。

・着手金
着手金は弁護士が案件に着手するために必要となる費用です。結果の成功・不成功に関わらず支払うものです。

遺留分の額 着手金
300万円以下 請求する額の8%
300万円を超え3000万円以下 請求する額の5%+9万円
3000万円を超え3億円以下 請求する額の3%+69万円
3億円を超える 請求する額の2%+369万円

・報酬金
事件後に弁護士に支払う費用です。実際に財産を取得できた際のみ支払うものです。こちらも相場が決まっています。

遺留分の額 報酬金
300万円以下 請求する額の16%
300万円を超え3000万円以下 請求する額の10%+18万円
3000万円を超え3億円以下 請求する額の6%+138万円
3億円を超える 請求する額の4%+738万円

その他、実費や日当、手数料などがかかります。

詳しくは、「相続で弁護士に依頼するといくらかかる?弁護士費用の種類と相場」をご参考ください。

なお、当事務所の相続案件の費用は「高島総合法律事務所 相続に関する弁護士費用」に掲載しています。

 

遺留分減殺請求に関するトラブル・お悩み

具体的なトラブル・お悩みを抱えている方には、以下の記事をおすすめします。

生前贈与と遺留分減殺請求

>>「生前贈与は相続トラブルのタネ!数年前の生前贈与は遺留分の対象となるのか?」

遺留分を請求できる生前贈与と請求できない生前贈与があります。その判別がつくようになるとともに、請求できる遺留分の計算方法もわかるようになります。

遺留分と不動産の評価額

>>「遺留分をより多く貰いたい!不動産の評価額を上げて請求額を増やす方法」

遺留分に含まれる不動産の評価額を上げたいという方は必見。この内容を知っていなければ不動産評価額で損をしてしまう可能性もあります。

遺留分減殺請求をされている

>>「遺留分減殺請求の意思表示がされたらすべき4つのこと|内容証明郵便は無視しても良い?」

遺留分減殺請求をされている・意思表示を受けているという方に読んでいただきたい記事です。受けた意思表示の対処の仕方や相続分を1円でも守る方法について紹介しています。

 

遺留分減殺請求は弁護士に依頼しましょう

もしあなたが遺留分減殺請求で悩んでいるのであれば、弁護士に相談することをおすすめします

費用を紹介したところで確認いただいたように、遺留分減殺請求は自力で行えばあまりお金がかからないものの、弁護士に依頼をすると、結構な額のお金がかかります。

しかし、遺留分減殺請求の場合は「弁護士に相談する・依頼する」ことをおすすめします

なぜなら、解決に向かうスピードが違うからです。

相手方にとっては、遺言書などにより一度自分の手に入った遺産を取り戻す請求が行われるわけで、すんなりと請求を認めたくないと思うのが自然な気持ちです。

お金が絡む問題である以上、一筋縄で解決することは難しいと考えるべきかもしれません。

しかし、第三者である弁護士が当事者の間に入ることによりあっという間に解決に向かうという事例も少なくありません弁護士が入ることにより、遺留分の問題は家族の揉め事から法律上認められた権利となり、家族である相手方も請求に応じざるを得ないとなりやすいです。早めの解決を望むのであれば、弁護士に相談・依頼すべきです。

また、相手から合意を得ることだけが難しいのではなく、遺留分減殺請求は手続きも煩雑で複雑です。遺留分を計算する際に、生前贈与などの特別受益があったり、借金等があったり、評価の難しい会社の株式や不動産が入っている場合には、特に複雑になります。遺留分の計算や遺留分減殺請求を行使した結果どうなるかなどの処理が難しくなります。

遺留分も法律問題ですから、法律の専門家である弁護士に依頼してください。

特に相続人同士の関係が良くなく、問題が泥沼化してしまうような場合、あるいは相続人同士が疎遠で連絡が取りにくいなどの場合は、なるべく早い段階から弁護士に依頼することをお勧めします。

「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。


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もしあなたが相続のことでお悩みでしたら、ぜひともお問い合わせください。相続に関することであればどんな些細なことでも構いません。悩むあなたのパートナーとして親身に寄り添い解決を目指します。

なお、初回相談料30分5,000円(税別)いただいています。

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高島総合法律事務所

〒105-0001

東京都港区虎ノ門1-11-7 第二文成ビル9階

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03-3539-3339

代表弁護士:高島秀行

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