遺留分

価額弁償|遺留分減殺請求されたけれど不動産でなくお金で渡したい

遺留分減殺請求をされ侵害分の遺産を渡さなければならないが、不動産を共有状態にしたくない、お金として渡したい。

このように考える方に対して、有益なのが「価額弁償」という制度です。

一つの動産や不動産を他の相続人と分割・共有することは、のちのトラブルを生む原因になるかもしれません。

今回の記事では、この価額弁償について、その意味や計算の仕方について紹介していきます。

価額弁償とは

まずは価額弁償、そのものについて説明していきます。

価額弁償とは、現物ではなく、価額で弁償することで、遺留分減殺請求に応じることができるというものです。

遺留分減殺請求において、請求の対象となる財産が不動産であったり、株式であったりと、金銭以外であるということもあるでしょう。

そのような場合、その対象となる財産については受遺者と遺留分権利者が共有しなければなりません。

これを避けるために、代わりに同程度の価値の金銭を支払えば、遺留分減殺請求に応じた、とするというものが価額弁償です。

 

価額弁償の額の決定について

価額弁償において、その額の決定方法について紹介します。

話し合いにより当事者間で合意ができる場合

不動産の額について受遺者等と遺留分権利者の間で合意ができれば、当事者が合意した金額を基準として金銭の支払額を決めることができます。

以下でも紹介しますが、もし合意ができない場合には、裁判所によって不動産鑑定を行ってもらうことによって時価を定めることになることもあります。

この場合、鑑定費用などで多額の費用と多くの時間とかかってしまいますので、できることならば当事者間での合意を目指すことが良いでしょう。

話し合いでは当事者間で合意ができない場合

不動産の額について受遺者と遺留分権利者の間で合意ができない場合、価額弁償の金額を決める方法は、不動産の時価を基準とします

この基準となる時期についてですが、注意が必要です。

遺留分減殺請求の場合、遺留分に含まれる不動産の評価額を決める際の基準となる時期は、相続開始時(被相続人の死亡時)です。

しかし、価額弁償においては異なります。

価額弁償の基準時は現実に弁償がなされる時点であるとされています。

なお、遺留分権利者が訴訟を提起して、これに対して価額弁償の抗弁が出された場合には、事実審の口頭弁論終結時を基準としています

これは、現実に弁償される時点に最も接近した時点であるため、基準時として採用しています。

 

一部の財産のみ価額弁償することも可能

遺留分減殺請求を受けた場合、すべての遺産ではなく一部の遺産のみについて価額弁償をしたいというケースもあるかと思います。

例えば、包括遺贈により不動産や株式を受けたが、不動産については持分共有で、株式は価額弁償して金銭として受け取りたいというケースです。

結論、一部の財産のみ価額弁償することは可能です。

不動産や株式など、複数の資産の遺贈がなされた際に、すべてについて価額弁償する資力が無い場合や、遺留分減殺請求されることを望まない財産(事業承継により取得した株式など)がある場合などでは、一部のみの価額弁償が可能です。

事業承継と遺留分については特例が定められています。事業承継を考える経営者必見!相続・遺留分のトラブル無しで円滑に進める方法で詳しく知ることができます。

 

遺留分権利者から価額弁償を求めることができるのか

遺留分減殺請求に対し、金銭で支払うのか、共有にするのかは、受遺者など請求された側に選択権があります。

請求された側が金銭で支払いたいと言えば、遺留分権利者が、不動産で欲しい、あるいは株で欲しいと請求してきたとしても、金銭で支払うことができます。

逆に請求される側が不動産持ち分や株式の持ち分を渡すと言えば、遺留分権利者が金銭での支払を請求しても金銭を支払う必要はありません。

以上のように、遺留分権利者から価額弁償を求めることはできません

 

価額弁償の額に関する話し合いが始まらない場合は

遺留分権利者から価額弁償請求することはできないと紹介しましたが、では受遺者が価額弁償の意思表示をしたにも関わらず、いついくら支払うという価額弁償に関する具体的な話し合いが始まらない場合はどうすればよいのでしょうか。

遺留分権利者は、受遺者等が主張するとおり、価額弁償の請求を選択して、金銭請求することが可能です。

他方、受遺者等が現実に価額弁償をするまでは、価額弁償の請求ではなく、原則通り目的物の所有権に基づく現物返還請求をすることも可能です。

 

価額弁償請求についての遅延損害金の起算点は

遅延損害金の起算日は、遺留分権利者が受遺者に対し弁償金の支払いを請求した日の翌日になるとしています。

したがって、遅延損害金のことを考えますと、価額弁償請求をおこなうことが決まっているのであれば、なるべく早く受遺者に対して支払いの請求をしておいた方がよいです。

しかし、価額弁償請求権を取得することにより、遺留分権利者は現物返還請求権を失うことになりますから、受遺者が無資力でないかの確認が必要です

受遺者に対し金銭債権を取得するにすぎませんので、受遺者が無資力の場合は、価額弁償金を現実に回収できなくなってしまうかもしれません。

 

価額弁償をしたいと考えるあなたには

価額弁償においてはトラブルが発生しやすいのは、やはり不動産の評価額の決定の場面です。

価額弁償をしたいあなたからすると、不動産の評価額をできるだけ低くし、価額弁償額を抑えたいと考えるでしょう。他方で、遺留分権利者である相手方からすると、不動産の評価額を高くしたいと考えます。

当事者の間で合意が取れるということは珍しいことです。

そこでおすすめしたいのが、弁護士に相談するということです。

弁護士に依頼することで、スムーズに、また相手方と直接的なやりとりをできるだけ少なくして解決に進めることができます。

また、もし相手方が弁護士を立てて遺留分減殺請求しているのであれば、あなたも弁護士をパートナーとして立てるべきです。

相手方が相続のプロを味方につけているにもかかわらず、あなたが一人だけであれば有利に進められる可能性のあった事案も、不利になってしまうかもしれません。

弁護士という強力なパートナーを味方につけ、損をしない相続を実現しましょう。

「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。


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