遺留分減殺請求において、当事者それぞれの相続分や分割方法を決める最後の方法が遺留分減殺請求訴訟です。
交渉や調停でも合意に至らなかった場合、この訴訟をおこなうことで決着をつけることになります。
今回の記事では、遺留分減殺請求訴訟をするうえで知らなければならないこと、例えば訴訟先となる裁判所や準備すべきもの、訴訟にかかる費用などをお伝えします。
目次
遺留分減殺請求訴訟とは
遺留分減殺請求訴訟は、遺留分の請求を行うために、裁判所に提起する民事訴訟です。
遺留分減殺調停をおこなっても両者合意に至らなかった場合にこの遺留分減殺請求訴訟に移ります。
遺留分減殺請求の訴訟先の管轄裁判所は2種類
遺留分減殺請求訴訟では、被相続人の最後の所在地を管轄する裁判所に提起します。そして、訴訟の提起先は2通りあります。
簡易裁判所と地方裁判所です。これらは、請求する遺留分の額によってその訴訟先が決まります。
請求する額 | 訴訟先管轄裁判所 |
---|---|
140万円以下 | 簡易裁判所 |
140万円を超える | 地方裁判所 |
遺留分減殺請求訴訟の流れ
遺留分減殺請求訴訟の流れについて説明します。
① 訴状の作成・訴訟提起
家事事件の多くは、調停が不成立となったら自動的に審判へ移行します。しかし、遺留分減殺請求の場合は、調停から訴訟に移る際、別途訴訟を提起しなければなりません。審判ではなく訴訟になるからです。
そのため、訴状を作成する必要があります。
② 遺留分減殺請求訴訟
訴状を裁判所に提出すると、裁判所から出頭期日の日程の調整連絡がきます。相手方に対しても答弁書の提出と期日への出頭の呼び出しがなされます。
訴訟の中では、当事者双方がそれぞれの意見を主張し、答弁書やそれら主張をもとに立証していくことになります。
③ 判決・不服申立て
両当事者の主張・立証が完了すると、裁判所は判決を下すことになります。
通常の訴訟と同様に、第一審の判決に不服がある当事者は控訴できます。
第一審が簡易裁判所の場合には控訴審は地方裁判所でおこなわれ、第一審が地方裁判所の場合には、高等裁判所で控訴審がおこなわれます。
さらに控訴審にも不服がある場合には上告し、高等裁判所または最高裁判所で上告審がおこなわれます。
第一審・控訴審の判決への不服申立ては、判決書の送達から2週間が期限です。この2週間の期限内に不服申立てがされないと、判決が確定となります。
④ 遺留分の回収
和解内容もしくは判決内容により、債務者は遺留分の支払いをおこないます。
もし相手方が従わず、遺留分の支払いをしなかった場合には、別途民事執行の手続き(相手方の財産の差押えなど)をとり強制的に遺留分を回収することとなります。
遺留分減殺請求訴訟に必要な書類
遺留分減殺請求訴訟に必要な書類は以下です。
・訴状
請求の趣旨や訴訟の原因を記載した書類です。
・添付書類
添付書類には、原告の主張の証拠となる資料を加えます。以下の書類を添付すると良いでしょう。
・被相続人の遺言書の写し
・遺留分減殺を求める内容証明郵便
・被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本類
・相続人全員の戸籍謄本類
・被相続人の相続財産の目録
・残高証明書 など
遺留分減殺請求訴訟に必要な費用
遺留分減殺請求訴訟に必要な費用は2種類です。訴訟費用と郵便切手の予納が必要です。
・訴訟費用
訴訟費用は、請求する遺留分の額に応じて決定されます。該当する金額の収入印紙を購入し、訴状に添付します。
請求する額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 10万円ごとに1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 20万円ごとに1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 50万円ごとに2,000円 |
1000万円を超え10億円以下 | 100万円ごとに3,000円 |
例えば、遺留分として250万円の請求をするとします。
・100万円までの部分:10,000円
・100万円から250万円の部分:8,000円
合計で18,000円の収入印紙を添付することになります。
・郵便切手の予納
郵便切手の金額については、提起先となる裁判所によって違いがあるので、提起先の裁判所へ確認してみてください。
遺留分減殺請求訴訟にかかる期間
どれだけの期間、遺留分減殺請求訴訟にかかるのか気になる方もいるでしょう。
結論から申すと「場合によって異なります」としか言えません。
なぜなら、出頭回数が数回で終わることもあればそれ以上にかかることもあり、さらに控訴審まで長引いてしまうこともあるからです。
しかし、調停までおこなってもなお相手方は請求に応じていないのでしょうから、すんなりと合意に至って早期に終わるということはあまりないでしょう。
長期間かかる覚悟が必要かもしれませんね。
遺留分減殺請求の全体の流れ
ここで、まだご存知でない方は遺留分減殺請求の全体の流れを知りましょう。
遺留分減殺請求は以下の流れで進んでいきます。
① 遺留分減殺請求の意思表示
② 話し合い・交渉
③ 調停
④ 訴訟
④の訴訟が、今回の記事で説明した、遺留分減殺請求訴訟です。
③ 遺留分減殺調停が当事者の話し合いにより解決を目指す一方で、遺留分減殺請求訴訟は決着をつけることを目的としています。
したがって、どれだけ相手方と争っていようと、この訴訟の中で分割割合や分割方法を決めることになります。
遺留分減殺調停に関して知りたい方は「遺留分減殺請求の調停はどのように進む?流れや必要書類・費用を解説」をご覧ください。
また、詳細な「遺留分減殺請求全体の流れ」については「遺留分減殺請求は大変?方法・かかる期間や費用」にて説明しています。
遺留分減殺請求ではいきなり訴訟ができないことがほとんど(調停前置主義)
調停を経ることなく、訴訟をしたいと考える方がいるかもしれませんね。
※ 遺留分減殺調停とは、家庭裁判所の調停委員会に当事者の間に入ってもらい、遺留分の返還について話し合うことです。
しかし、遺留分減殺請求では、いきなり遺留分減殺請求訴訟を起こす前に、まずは、遺留分減殺調停を裁判所に申し立てるのが一般的です。
これは、遺留分減殺請求について、原則「調停前置主義」が取られているからです。
調停前置主義とは、「訴訟を起こす前にまず調停で解決を目指す」というもので、裁判ではなく調停から先に始めなくてはなりません。
遺留分減殺請求訴訟では弁護士に相談・依頼すべき
遺留分減殺請求訴訟の場合、裁判所の選定から訴状の作成、証拠による立証まで、専門的な知識が必要となる場面に多く遭遇します。
そのため、遺留分減殺請求訴訟にまで持ち込んだ、または持ち込みそうという場合であれば、弁護士に相談し、依頼されることをお勧めします。
訴訟では、その訴訟の争点を把握し、その争点について効果的な主張立証をすることで、訴訟を有利に進めていくことが要求されます。一般の方は、争点を把握することも難しいですし、争点に対する主張をわかりやすく説得力をもって書面に書くことは難しいです。
一般の方は、争点に無関係の相手方のどこが悪いかということを主張し立証してしまいがちで、訴訟にとって重要な点を主張せず、訴訟を有利に進めるどころか却って自分を不利にしてしまうケースが多いです。
正直申し上げて、弁護士に依頼せず、ご自分で訴訟をして訴訟を有利に進めることは難しいケースが多いと思います。
さらに、弁護士に訴訟の代理をすることで、法律の知識が要される面倒な手続きを任せることができます。くわえて、自力での解決を目指す場合、出頭して相手方と顔を合わせなければならないですが、弁護士に依頼すれば顔を合わせずに済みます。
法律のプロである弁護士の力を借りることで、迅速に手間をかけずに遺留分減殺請求訴訟を乗り越えることができるでしょう。
「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。
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