遺言

親の遺言書が見つからない…遺言書の有無の確認方法と探し方のコツ

親が亡くなり、相続が発生したらまずは遺言の確認をしなければなりません。遺言書がある場合には、遺言書通りに遺産分割を行わなければならないからです。

しかし、「遺言書がどこにあるのか分からない」「そもそも親が遺言書を残したのかも分からない」という方もいるでしょう。

あなたの親が遺言書を残したかどうかよって、あなたが受け取ることのできる遺産は大きく変わるかもしれません。

今回の記事では、遺言書の有無の確認方法、また遺言書の探し方について紹介します。

遺言書の種類

遺言書にはいくつかの種類があります。亡くなった方がどの種類の遺言書を書いたのか、それによって有無の確認方法は異なります。まずは遺言書の種類について紹介します。

・自筆証書遺言

自筆遺言証書とは、全文を自分で書いた遺言書です。自分で書いて自分で保管する遺言書がこの自筆証書遺言です。

・公正証書遺言

遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人に作成してもらう遺言書です。公証人とは、法律関係で長いキャリアを持つ、いわば遺言の専門家です。また、保管も公証役場にて行います。

・秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に自分自身で作成します。封をした後証人2人に立ち会ってもらいながら公証役場にて公証人に封筒を差し出します。そして遺言者と公証人が署名・押印をします。保管は自身で行います。

 

以上が遺言書の種類です。ただし、秘密証書遺言はあまり一般的ではありません。ほとんどの遺言書が自筆証書遺言か公正証書遺言に該当するかと思います。

 

遺言書の有無の確認方法

種類について知っていただいたところで、それぞれに対応した遺言書の有無の確認方法をお伝えします。

公正証書遺言の探し方

亡くなった方が遺言書を残したのか分からない方は、まずは公正証書遺言が残っているか確認すべきです。

もし亡くなった方が公正証書遺言で遺言書を残されていた場合、公証役場に遺言書が保管されているからです。これだけたくさん公証役場があるとどこに保管したのだろうと思うかもしれませんが、この公証役場は全国に約300箇所あります。

また、遺言書がどこの公証役場に保管されているのか知らなくても問題はありません。公証役場は全国の公証役場を繋ぐネットワークを持っています。検索すれば、全国どこの公証役場に遺言書が保管されているのか知ることができます。

そのため、有無の確認だけであれば、お住まいや職場の近くにある公証役場にて問い合わせを行いましょう。

もし、問い合わせをおこなった公証役場に遺言書が保管してあれば、遺言書の写しをもらって内容を確認できます。もし、他の公証役場に保管されていた場合は、その公証役場に行って写しをもらう必要があります。

公正証書遺言の検索ができるのは、相続人とその代理人のみ

ただし、誰でも検索をかけて遺言書の有無を確認できるわけではありません。

問い合わせができるのは、相続人とその代理人に限られます。そのため、以下の書類等の持参が求められます。

 

相続人として公証役場に行く場合

 ・遺言者が亡くなった旨を記載している戸籍謄本や除籍謄本

 ・相続人であることを証明する戸籍謄本

 ・検索者(相続人)の3カ月以内の印鑑証明書

 ・実印

 ・免許証などの写真付き身分証明書

 

相続人の代理人として公証役場に行く場合

 ・遺言者が亡くなった旨を記載している戸籍謄本や除籍謄本

 ・相続人の代理人であることを証明する戸籍謄本

 ・検索者(相続人の代理人)の3カ月以内の印鑑証明書

 ・免許証などの写真付き身分証明書

 ・相続人からの委任状

これらを用意してから公証役場に向かいましょう。

公正証書遺言の有無の確認・閲覧を、遺言者の生前にすることはできません

相続人の中には、公証役場に行って遺言の内容を確認したいという方もいるかもしれません。

しかし、遺言書の中身の閲覧は、遺言者の生前には本人しかできません

さらに、遺言書が存在しているかどうかの確認も公証役場に対して相続人がすることはできません。

これは、遺言の存在を相続人に知られることにより、遺言者への不当な圧力や要求がおこなわれることを防ぐためです。

たとえ、遺言書の内容や、存在が気になったとしても公証役場は教えてくれないので、あらかじめ把握しておいてください。

秘密証書遺言の有無も公証役場で確認できます

秘密証書遺言は公証役場で署名・押印をするものです。そのため、公証役場に行けば、遺言作成の事実の有無を知ることができます。

ただし、公証役場で現物を保管しているわけではないため、内容の確認はできません

内容の確認のためには、後述の自筆証書遺言と同様の確認の方法を取りましょう。あくまで、公証役場での問い合わせは「遺言書が存在する」と知ることができるのみです。

自筆証書遺言の探し方

自筆証書遺言は先述の通り、自分で保管する遺言書です。残念ながら、確認するのは自力で探し出すしかありません。

ご想像の通り、亡くなった方が残した遺言書が自筆証書遺言だった場合、それを見つけるのには苦労をします。ましてや遺言書が存在するのかどうか分からないという人にとっては相当骨が折れる作業になるでしょう。

ここでは、よくある自筆証書遺言の保管パターンを紹介します。参考にして探してみてください。

 

・親交の深かった人に預けていた

自筆証書遺言は自身の手元になければならない、ということはありません。誰かに預けている可能性もあります。亡くなった方が特に親交の深かった人に遺言書を預かっていないか聞いてみましょう。

預けていないとしても、遺言書の隠し場所を聞いたことがある可能性もあります。また、「遺言書を書いたと聞いたことがある」という情報を得られるかもしれません。

 

・弁護士に預けていた、信託銀行に預けていた

弁護士は遺言書作成の業務も請け負います。作成後弁護士に保管を依頼しているケースもあります。

また、信託銀行は、遺言書の保管や遺言執行のサービスを提供しています。

いずれかに遺言書を預けている可能性もあるので、生前懇意にしていた弁護士や信託銀行がある場合には、問い合わせてみると見つかるかもしれません。

 

・重要なものとして保管している

誰にも預けず自身で大切に保管しているパターンです。亡くなった方が重要なものの保管に使っていそうな場所を手当たり次第探しましょう。

例えば、金庫・机や棚の引き出し・押入れの中・仏壇・貸金庫などが挙げられます。

亡くなった方がどこに保管しそうか想像して、くまなく探してみましょう。

 

遺言書が見つかったら

遺言書を探して見つけた場合、次に取らなければならない行動についてお伝えします。

しかしその前に、ここで絶対に行ってはいけないことがあるのでまずは紹介します。それは「遺言書を勝手に開封すること」です。

「検認」を経る前に勝手に開封してはいけません

ようやく探していた遺言書が見つかり、すぐに開けて内容を確認したい気持ちになるのも分かります。しかし、勝手に開封するのは避けてください

では、何をすべきなのでしょうか。遺言書が出てきたら、まずは検認の申立を行いましょう。自筆証書遺言の開封には、家庭裁判所の検認が第一に必要だからです。

検認とは、遺言書の内容の改ざんを防ぐために法律で決められている手続きです。相続人立ち会いのもと家庭裁判所で検認を受け、封をしている場合であればその後に開封しなければなりません。

万が一検認を受けずに勝手に遺言書を開封してしまった場合、5万円以下の罰金が発生する可能性があります。

遺言書の保管者や、遺言書を発見した相続人などが家庭裁判所に申立をおこないます。以上が検認の申立に必要なものとなりますので、これらを家庭裁判所に持参しましょう。

 ・収入印紙 800円/遺言書1通あたり

 ・連絡用の郵便切手

 ・申立書

 ・申立人、相続人全員の戸籍謄本

 ・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本

ただし、ここまで話したのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合のみです。

公正証書遺言の場合は、検認を行う必要がありません。受け取れるのはあくまで写しであって、たとえ改ざんしたとしても原本と見比べれば、一目瞭然だからです。

検認を受けた後、遺言の有効性について確認します。あくまで検認は、遺言書の改ざんを防止するためのものです。遺言書が方式に則っていなければ、検認後にも無効になります。

遺言の内容に基づき遺産分割を行います

有効な遺言書だった場合、その遺言書の内容に基づいて遺産分割を行います。

もし遺言に記載がない遺産が存在する場合には、その遺産についての分割を相続人全員で話し合う必要があります

さらに、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、遺留分の問題が発生します

ここで、遺留分の問題について簡単に説明します。遺言によって与えられた相続分が、法律によって相続人に対し最低限認められている相続分を下回っていた際に、その下回っていた分を他の相続人に対して請求できるというものです。

遺留分は理解するのが難しいかと思います。詳しく説明したこちらの記事「あなたは遺留分を侵害されている?相続人に認められる遺留分の割合」も参考にしてください。

 

遺言書が残っていない・見当たらない場合は

遺言書が無い場合は、相続人全員で話し合って相続分を決めることになります。分割内容は、法定相続割合でも、それ以外の割合でも問題ありません。

法定相続分とは、民法で定められている相続割合のことで、遺言書に相続割合の指定がない際に用いられます。

また、相続分の決定には相続人全員による同意が必要です。同意が得られない場合、遺産分割調停や遺産分割審判を経て、各相続人の相続割合を決めるという流れになります

 

遺言書の有無に関してよくあるトラブル

遺言書に関して発生する主なトラブルを紹介します。

① 見つけた遺言書が有効でなかった

遺言書を見つけたとしても、その遺言書通りに遺産分割が進まないというケースがあります。それは、遺言書が無効だったという場合です。

せっかく見つけた遺言書が無効であったというケースはよくあります。

遺言書には、法律で決められた書式や形式により作成されていることが求められます。それに従わない形で作成された遺言書は無効の扱いになり、「遺言書が無い場合は」と同様の方法で分割割合が決定します。

こちらの記事「その遺言書は無効だよ!」と親族から言われてしまった皆様へ、まだ諦めないでください」で遺言書が有効になるのか、それとも無効なのかチェックリストを用意していますので確認してみてください。

② 遺産分割後に遺言書が見つかった

遺言書が無いと判断し遺産分割を行ったものの、その後に遺言書が見つかったというケースも珍しくありません。

その場合、一度行った遺産分割をやり直さなければならないのでしょうか。

基本的には、遺言書の内容に従わなければなりません。相続人全員が遺産分割協議の結果に納得していたとしても、後から見つかった遺言書の内容と異なる場合は、協議の内容は無効になってしまいます。

遺言書の内容は、亡くなった方の最後の意思であり、最大限尊重されなければならないためです。

ただし、遺言書の内容により遺産分割をやり直さずそのままの分割割合で済ませるケースもあります。

この点ついては、法律に詳しくない方にとって判断が大変難しいので、弁護士に相談してみることをおすすめします

③ 遺言書を隠していた・捨てたという人がいた

遺言書の内容が自分にとって気にくわないだろうと考える人が遺言書を見つけたら、遺言書を隠したり破棄したりしてしまうこともあるかもしれません。

このケースに遭遇しやすい事例をお出しします。

生前、父親に「お前には遺産はやらない」と言われた息子がいたとします。すると、遺言書の内容がその息子にとって不利な可能性がありますよね。そんな中、本人が最初に遺言書を見つけたらどうでしょう。遺言書は最初から無かったことにしたくなるかもしれません。

遺言書を隠したり、捨てたりした場合、それを行った人は相続人としての権利を失います。これを相続欠格と言います。

ただし、遺言書が存在して、特定の相続人が遺言書を破って捨てたことを証明できるケースはめったにないと思います。


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