遺留分減殺請求をする上で重要なことの一つに「遺留分減殺請求の相手方が誰なのか知る」ということがあります。
遺留分減殺請求は、遺留分を侵害している相手方に対して請求をおこなうのが一般的ですが、場合によってはそれ以外の人に請求をおこなわなければならない場合があります。
この記事では、遺留分減殺請求を誰にすべきなのか、そして相手方が分かった場合と分からない場合での対応の仕方について紹介します。
目次
遺留分減殺請求の相手方を知ることの重要性
遺留分減殺請求は、遺留分を侵害している人に対しておこないます。
したがって遺留分減殺請求をする上で重要となってくるのが、誰に遺留分減殺請求をするのかということです。
遺留分減殺請求には、1年間(もしくは10年間)の時効があります。その時効が経過する前に、遺留分減殺請求の相手方に意思表示をしなければ、遺留分減殺請求をする権利を失い、請求できなくなってしまいます。
「遺留分を侵害している人かと考えて、実際に遺留分減殺請求の意思表示をしたけど、実際には侵害していなかった。改めて実際に侵害している人に対して遺留分減殺請求をしたけれでも手遅れだった。」このようなことが起きてはなりません。
遺留分減殺請求の時効については「遺留分減殺請求はいつまでできる?時効発生までの期間と中断する方法」の記事で解説しています。
遺留分減殺請求の相手方となりうる人
実際にあなたが遺留分減殺請求できる相手が誰なのかを知るために、遺留分減殺請求の相手方となり得る候補の人たちを紹介します。
(1) 共同相続人
共同相続人とは、遺産相続が起こった時に、共同で相続人となっているあなた以外の相続人のことです。共同相続人が遺留分減殺請求の相手方であることが、最もよくあるケースです。
典型的な例は、亡くなった方(被相続人)に複数の子どもがいるのに、特定の子どもに多くの遺産あるいはすべての遺産を相続させるという遺言をのこしていたというものです。
遺留分を満たす相続分を受け取ることのできなかった子どもが、多くの相続分を受け取った兄弟に対して遺留分減殺請求をおこないます。
(2) 受遺者(じゅいしゃ)
受遺者とは遺言の指定によって贈与を受けた人です。
贈与に関する遺留分減殺請求には順序が決まっており、遺贈を減殺したのちでなければ、生前贈与を減殺することはできません。したがって、遺贈の割合が高いほど、遺留分減殺請求の相手方となる可能性があります。
(3) 譲受人(ゆずりうけにん)
譲受人とは、減殺対象となる財産を受遺者から譲渡された人のことを言います。
通常、この譲受人は遺留分減殺請求の相手方になりません。譲り渡した受遺者本人に価額弁償の請求ををおこなうのが通常です。
しかし、譲渡の際に、悪意の場合(遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合)は、この譲受人に対して遺留分減殺請求ができます。
遺留分減殺請求と譲渡の話については、「遺留分減殺請求の前もしくは後に第三者へ目的物が譲渡されていたら」をお読みください。
(4) 承継人(しょうけいにん)
遺留分を侵害している相手方がすでに死亡しているというケースもあるかと思います。
そのような場合では、もちろん本人へ請求することができませんので、その承継人に遺留分減殺請求をおこなうことになります。
(5) 転得者(てんとくしゃ)
転得者とは、減殺対象となる財産を譲受人からさらに受け取った第三者の人のことを言います。
譲受人の際と同様に、通常、転得者は遺留分減殺請求の相手方になりません。しかし、譲渡の際に、悪意の場合(遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合)は、この転得者に対しても遺留分減殺請求ができます。
(6) 遺言執行者(いごんしっこうしゃ)
遺言執行者を相手に遺留分減殺請求をすることができるかという点については争いがあります。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことを言います。相続人以外がこの遺言執行者を務めるケースもあります。
遺言執行者について詳しい情報は、「遺言執行者の権利と義務・いない場合の選任の方法・報酬について」を参考にしてください。
遺言による執行が完了した場合には、遺言執行者は遺留分減殺請求の相手方にはなりません。受遺者又は相続させる遺言による遺産の相続人が遺留分減殺請求の相手方となります。
また、特定遺贈の場合は、遺言執行者は遺留分減殺請求の相手方とはなりません。
遺言執行者が遺留分減殺請求の相手方となるのは、遺言で包括遺贈がなされている場合で、遺言の執行が完了する前となります。
以上が、遺留分減殺請求の相手方になり得る人たちです。あなたが遭遇しているケースに当てはめて、誰が遺留分減殺請求の相手方になるのか確認してみてください。
遺留分減殺請求の相手方が分かったら
遺留分減殺請求の相手方が判明したら、いざ遺留分減殺請求の開始です。
遺留分減殺請求をするには、以下の手順を踏みます。
①遺留分減殺の意思表示
②話し合い
③遺留分減殺請求の調停
④遺留分減殺請求の訴訟
まずは「①遺留分減殺に意思表示」を相手方に対しておこないましょう。
意思表示は口頭か文面など、形式に決まりはありませんが、内容証明によっておこなうことを推奨しています。内容証明で送ることによって、時効が経過する前に意思表示をおこなったという証拠が残るからです。遺留分減殺請求の内容証明の送付方法については、「遺留分減殺請求の内容証明の書き方【見ながら書けるサンプル付き】」をご覧ください。
①から④の全体の流れについては、「遺留分減殺請求は大変?方法・かかる期間や費用」で紹介しています。この記事を読めば、どれだけの費用や期間がかかるのかもわかるでしょう。
遺留分減殺請求の相手方が誰なのか分からない場合は
場合によっては、誰が遺留分減殺請求の相手方になるのか判断ができないという場合もあるでしょう。そのような場合には、まず、弁護士に相談してください。
弁護士に相談していると時効期間が満了してしまうという場合には、自分以外の相続人全員に対して遺留分減殺請求の内容証明を送るという方法も考えられます。
そうすることで、遺留分減殺請求の実際の相手方に対して内容証明を送らずに時効が過ぎてしまったという、最悪の事態を防ぐことができます。
そして、内容証明を送って意思表示をしたら、弁護士に相談すればよいでしょう。相手方が分からないという場合、おそらくあなたは複雑な相続に関わっていることでしょう。
そのような複雑な問題が絡み合う遺留分減殺請求は解決までに時間がかかります。
弁護士は相続に関するプロです。相手方との話し合いや遺留分減殺請求に関わる手続きまで、弁護士に依頼することだってできます。
もしあなたが一早い解決を望むのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。きっとあなたの力になってくれるはずです。
「遺留分減殺請求は弁護士に依頼すべき」このように言われている理由は「遺留分減殺請求を弁護士に相談した方が良い”7つ”の理由」を読めばわかります。
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